続 ヒ ガ ン バ ナ ・
ラ プ ソ
ディ
|
(2004.12.20UP)
4.果報は寝て待った
忘れたわけではないけれど
あれから5年。
翌年はよく頑張った。あの疑惑の種もどきの時と同じように,ヒガンバナの蕾や花茎を束にして水につけてみた。そのまま飾ったり、眺めたり、野原を探したり,ヒガンバナの球根を庭に植えたり,いろいろチャレンジした。あの縁起を担げる鍋も使ったりした。
忘れてはならないのが、種ができるという中国原産「コヒガンバナ」を送ってくださる方もいらっしゃったことだ。日本のヒガンバナは3倍体で種ができないのに対して,このコヒガンバナは2倍体。
苦労せずとも種ができるヒガンバナの種類なのだ。
テカテカと真っ黒に輝くコヒガンバナの種を眺めながら,今度こそヒガンバナの種を探してみせるぞ〜〜っ,と夢を膨らませてみる。
が,なかなか見つからないから宝物。
夢は膨らむが種はしぼむ。夢の玉に逢えるのは一体いつの日か。
…と思いながらも,私はすぐに忘れてしまう。
手応えがないと、自然道楽アンテナが方々へ向き、ヒガンバナの種は頭の片隅にしまいこみ、いつの間にか縁起物のあの鍋も行方不明になってしまった。
「ま,そのうち一度は拝めるだろう。」
果報は寝て待て。
寝て待って,忘れかけ,そして2004年秋がやってきた。
晩秋の2004年11月12日,ふと足元を見て驚いた。
あれ? これは…
走馬燈のように、ヒガンバナに狂った日がよみがえる。
葉っぱ色よし、形よし。この細長葉っぱは確かにヒガンバナだ。
で、茎の先には丸いふくらみがー!
これはこれは、もしかしてもしかする?
「おーい、私はここよ。忘れてない?」
ヨロヨロとしている茎は,まるで私に手を振ってくれてるようだ。
鳴かぬなら、鳴くまでまとうホトトギス。
見つからねば そのうち見つかる ヒガンバナの種?!
夢の玉はどこいった?
普通、11月中旬にもなると、ヒガンバナは花茎は目につかない
痕跡すらなくなってしまうので、いったいどこにいったんだろうと不思議になるぐらいだ。
ヒガンバナ種発見の大先輩のお言葉によると,この時期の,この立ち上がり気味の茎こそがヒガンバナの種に近づく目印なのだ。
むむむ、これはかな〜り期待出来るかも?
落ち着いて,落ち着いて。
しゃがみ込む姿ほど不審なものはない。こんな場面でも周りの確認を忘れずに。
左右前後,よし,誰もいないし来そうもないぞ。
はやる気持ちを落ち着かせて、丸いふくらみをのぞき込んだ。
ぱっくり。
あれれ? 実の口が開いている。
「いひひひ、ちょっと遅かったですなぁ」
開いた口の中は,ぽっかりと空洞が出来ている。
もぬけの殻だった。夢にまで見たヒガンバナの種,ここまで追いつめておいて取り逃がすとは。がっくり。
まてよ、ニュートンに習えば重力の法則に従ってポトンと落下しているはずである。ヒガンバナ種ゲッターがその辺中にいるとも思えない。
よっしゃ,小さい物見つけはお得意分野だ。地面捜索モードに切り替えてからほんの数秒,あっけなく地面の枯れ草の中にキラキラ輝く真っ黒な種が見えた。
 |
夢の種はぴっかぴか |
やったー!
そして再び
拾った種は「いひひひ空洞」の大きさ・落ちていた位置関係ともにピッタリ合致する。
とはいえ、
「ほんとにヒガンバナの種? 転がってきた別の種じゃない?」
そう言われると困るなぁ。ヤブコウジやらキツネノカミソリやら、見栄えが似たものもいくつかありそうだ。
フッと不安になった矢先,数十センチ先にさらにヨロヨロの茎が視界に入った。
おおっ,おぬしもかーー?!
だが,それはさらに茎に生気がなく,倒れも倒れている。
さっきの茎がヨロヨロだとすると,これはもはやヨボヨボだ。
うーむ,これもやっぱり「いひひひ」だろうなぁ。
茶色い萎びた茎をそーっと手に取ってみたら…
なんということか、膨らんでぱっくり開けた口からは黒光りする種が見えた!
「貴方に逢えて嬉しいわ」
その口元はニッコリとほほえんでいるようだ。
先ほどの種と同じ黒いぴかぴか光っている種、夢にまで見たヒガンバナの種が2つ,目の前にあるのだ!
おっと、まて。
ヒガンバナ種2年連続発見した大先輩の貴重なアドバイスを忘れるところだった。
あぶないあぶない。
「去年見つけたのは茎で,先生がそれじゃあ解らないから球根がいるって言われてね,今年は球根ごと持っていって…」
そうか、つながっている球根が決定的な証拠なのだ。
ここは道端、どうみても勝手に増殖しているヒガンバナの球根を2ついただいても、差し障りないだろう。
兆が一なのか?
さてさて,球根を探すべく種付き花茎を辿ってみる。
なんにも掘る道具を持っていないので,原始的に手でここ掘れワンワンだ。土は畑の土タイプで黒くてねっとり粘土質。思ったより深いので手は真っ黒,ツメの間なんかめり込んでいる。
ただ、朝までの雨で苦労しつつも球根に早くたどり着いたのが幸いだった。
…あれれ、隣同士の球根じゃない?
万に一つとも言われるヒガンバナの種、辿った先の球根はお隣同士並んでいる。
まさか、これはコヒガンバナの球根では?
いやいや、どう考えてもこんな場所にわざわざ植える人はいない。
それに、コヒガンバナなら1ヶ月〜半月早く咲くし,従って種も10月に入るともう黒々としてきて,茎さえも立ち直れないほど横倒しになり,この11月半ばには見あたらなくなってしまう。我が家の庭で見ているので、コヒガンバナとは違う気がする。
 |
2004年8月30日には早くも満開
コヒガンバナの花(小橋家の庭) |
ヒガンバナの増殖法は,球根(正式には鱗茎)が分球する。親の周りに子どもの球根ができ,それがまた増え…というふうに,数年たてば親の周りに子分が密集する。
ということは,この2つの種付き球根は兄弟に当たる。
何らかの理由で突然変異でも起きて,種ができる球根ができたのだろうか?!
いやいや,万が一が重なって,兆が一の確率で兄弟仲良く種ができたのかも?
あーだこーだと考えは巡る。
夢の種は,また新たな疑問の種を私に蒔いていった。
そして、その種の行方
さて、その2つのヒガンバナの種の行方のお話。
前回もお世話になった種の先生のところに託した。
野外から収穫した万が一のヒガンバナの種、ネットの噂では「芽が出るものもある」「発芽能力はない」「花が早く咲くコヒガンバナがまれにある」など,いろいろと予測があるようだ。
後日、先生から「ひとつだけ種を植えました」と教えて頂いた。
幸いなことに、種の先生の周りには遺伝子レベルで調べてくださる方がいらっしゃるそうだ。その種から根っこでも出れば、その遺伝子が調べられるという。
果たして,あの種が発芽したら2倍体なのか,3倍体なのか,それとも4倍体なのか?いやいや,もっと倍数体だったりして。
ここからは専門家に任せよう。
どうか私の夢の種が芽を出しますように、パンパン。
 |
道ばたの草の運命…バッサリ (2004.12.15) |
その後,現場に行ってみた。
すると、バッサリと草刈りにあっていた。道ばたにおけるヒガンバナの扱いは、ほかの雑草の運命と同じである。
きっと、それはそこの毎年の作業なのだろう。
道ばたの草はたくましい。
草刈りも何のその、球根は太り、増殖していく。
そしてまた花を咲かせるのだ。
来年もあの場所にいってみなくっちゃ。
あの兄弟球根たちの咲かせる花はどんなだろう?
そのころにはあの種の芽,出てるかな?
どんなかな、こんなかな、あれこれ想像するときがうれしくも楽しくもある。
種結実のナゾ,解明されほしいような,ナゾのままでいて欲しいような…
ちょっと複雑な気がする。
私のピッカピカの夢はまだまだ続く。
トップページに戻る
|