林の中は,もう秋の気配。
ポトンとドングリや栗の落ちる音。そしてヒンヤリとした空気。
木々の枝をカラ類の集団が飛び交います。
私は石になったつもりで,遊歩道の道脇でしゃがみこんでます。
そして音のする方をじっくり見ていたら…
おおっ,見えたー!
こ・これは,アカネズミー?!
野生哺乳類ってなかなか逢う機会が少なくて,しかもネズミといえば夜行性。今まで見たものは用水路で沈んでいる退治されたものとか,家の軒下にこっそり巣を作っていたものとか,ほとんどが灰色チューチュー顔のものばかり。もしくは昼間の巨大ネズミヌートリアぐらいかな。
山の茶色っぽいネズミは初対面なのでした!
距離は約3m。いわむらかずおさんの「14匹シリーズ」を思わせるその姿は,やっぱり可愛い!
人通りもないことをいいことに,石の振り林に溶け込み作戦を続行することにしたのでした。
下草でちらちら見え隠れする姿は,ふっくらして動きも俊敏。
脚を止めると真ん丸に見えるのがとっても愛らしい。
ちょっと崖っぽくなった遊歩道斜面には土が見えるところがあって,穴が時々空いているところもありますね。
これがネズミの巣穴です。
周りには沢山の巣穴があって,これらは中のトンネルで繋がっているようです。

あっちへいったり,こっちへいったり,何度も往復してくれるのですが,何となく動きがせわしないような感じもします。
時々上を見上げているし。
その時,アカネズミが何か赤っぽいものに用心深く近づいては銜えました!
ネズミが銜える赤いモノといえば赤ちゃん?
わーい,穴からゾロゾロでてくる赤ちゃんの誘導だったりして。
噛んでは後ずさり,ちょっと噛んではあとずさり。
私は当然これから現れるだろうネズミの微笑ましい親子連れの姿を想像して,ワクワクして見つめていた。
その時,ネズミがガブリと何度も噛みついたのがみえて,赤裸のものが斜面を転がった!
途中で留まったらさらに噛みつくという念の入れよう,とうとう地面まで赤いモノは落ちてしまった。
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ぼてっ!
あれぇ〜?
ネズミにしては
こ・これは長いぞ〜
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当然,丸くてコロコロしたものが目の前に現れると思っていた私は,驚きのあまりホントに石のように動けなくなった。一瞬血の気が引いたが,ここでひるんでなるものか。
混乱する頭を沈めて眺めてみたら,紛れもないヘビだった!
こんなに美しい蛇ってみたことない!
赤に黒点模様,まさしく常夏ジャングル風!
もしや…どこかの外国製の飼育逃亡蛇だったりして…
綺麗なものには毒が有るといいますが,この魅惑的な模様に惹かれ,一歩進んで,二歩進んでみることにいたしましょう。
岩の隅にスルスルと逃げ込む蛇を見ながら冷静になって考える。
蛇ってふつうはネズミの天敵ですよね。
がぶっと丸呑みです。
でも,窮鼠猫を噛むって言葉もあるし,トムはジェリ−ネズミに噛みつかれる有名な歌がある。
相手は50センチクラスの小さな蛇だし,巣穴近くでウロウロしたのを見つけて撃退作戦に出たって不思議じゃない。まさしくアカネズミの逆襲だー。
さらに帰宅して画像を拡大すると…
ありゃりゃ,お見事に噛みつかれた歯形がくっきりと画像に写っているではありませんか。
何度も噛んでいたので,いくつもの歯形!
その上,周りはテカテカと光っていて,これはもしかするとだ液かな?
ハッと気が付けばー
蛇の魅力に誘われて石作戦はとっくに溶けていた。
あんなに動いたんだもの,もううネズミは驚いてどこかへ行ったでしょうね。
耳を澄ませてみたら…ガサゴソ,ガサゴソ
そのとき,アカネズミが走ってきた!
お口に大きなドングリを銜えて,往復すること実に3度
シダの間のお家に入っていったのでした。
ヒンヤリとした空気の中で,冬に備えてアカネズミはドングリをため込んでいるんしょうね。
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ドングリを持って入って,巣穴から出てきたアカネズミ |
さて,気になるネズミの逆襲にあった赤蛇の正体はー。
家に帰ってドキドキしながら本を開いたら,ジャングルの蛇じゃなかったことが判明。。
ジムグリの幼蛇だそうです。
日本の蛇もなかなかやるなぁと,その色彩に改めて感動したのでした。
アカネズミに出会って,蛇に出会った,秋の日の林。
知らないところで,いろんな営みがあるようです。 |