(付録)
思 い 切 っ て 「毛だらけ糞」
へ の 挑 戦
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やっぱりここまで来たらもう戻れない。
せっかくの拾い物,謎だらけのままじゃほっとけない。
思い切って「毛だらけ糞」解析の開始。さてさて結果は見てのお楽しみ。
やっぱり気になるのは衛生問題。ゴム手袋,お箸,使い捨ての容器など慎重グッズを用意して直接触れないようにする。不審に思われないようにベランダでコッソリ作業は進められた。
まずふやかそう。消毒もかねて薬箱で眠っていたアルコールに浸ける。
1日後ー液に色がついたぐらいで何も変わらない。
少しシェイクしてみる。
2日後ーやっぱりあまり変わらない。相当頑固そうだ。
ここで容器のふたを開け割り箸でつついてみる。
まだ固く毛が絡み合ってギシギシきしむ感じ。
3日後ー変わらぬ姿にしびれを切らし,液を足し,
感情的に思いきりシェイク。少しほぐれてきた?
4日後ーこれ以上アルコールにはまかせておけない。
最後に頼るのはやっぱり我が手,
ゴム手袋はめて直にほぐし1晩ねかす。
さて,5日目は冬型の上に強風。暖かい室内から窓越しに張り付いている長男をギャラリーに,吹きすさぶ寒風に震えながら私の作業は進む。手振り身ぶりの会話はまるでジェスチャーゲーム。
気になる糞の状態,昨日細分化しただけあって,中まで水分が浸透していてシットリとはしているが毛が絡んでわかりにくい。丁寧にバラバラにしてみる。
糞の中身は小石や砂をのぞけば大まかに2分される。
一つは動物の毛ー全体的に黒っぽくまるで散髪した子供の毛のようだ。もう一つは張りのあるゼラチン状のシートの断片。
「これは一体・・・???」
考え込み作業が止まった母をいぶかり,好奇心に駆られた長男は戸を開けようとするが,吹き込む寒風に負けてあわてて閉める。
この正体不明の物体ー骨片にしては柔らかいし平らすぎる。まさか爪? 自分の手を眺めてみる。ヒトの爪それに毛とくれば・・・? ふと頭の中に水中を怪しく漂うオフィーリアの姿がよぎる。これはもしかすると事件だろうか。
想像で青くなりかけたちょうどその時,平日でまだ明るいのに突然主人が帰宅。まるで物陰から見ていたかのような何というグッドタイミング。子供の手引きでやはり窓に張り付いている。
「ちょっと父さん見てみて,爪かも知れない,人間の・・・どうしよう。」
主人はフフンと鼻で笑うような素振りで着替えに去っていってしまった。その失礼な態度のお陰で平常心を取り戻した私は,識別すべく更なるステップに進む決心をした。暖かそうな明日にでも日光で乾燥後,誕生日に主人に買ってもらった愛用の双眼実体顕微鏡ファーブルを使えば正体は見えるかも知れない。
果たして翌日,乾燥時に変化が起こった。シュルシュルとみるみる縮んでゆくではないか。3ミリあった厚さは3分の1に,長さは3分の2になってしまった。これは爪ではなさそうだ。次によぎったのはミイラだった。正確には骨に張り付くミイラの皮膚。つまりこれは動物の皮膚ではないか。顕微鏡で見てみると,色の濃い線状の部分は毛であることがわかった。細い”産毛”が皮膚らしい内部から生えて張り付いている。皮膚とすると毛穴は? 見えない。乾燥しているからだろうか。もう一度水に浸してふやかして観察してみるがやっぱりないようだ。
皮膚の構造は上から表皮−真皮−皮下組織となっている。毛穴は表皮にあり,獣に食べられて消化する過程で肉や表皮が消化され,毛と真皮などが消化不良で糞として出たら・・・このような糞にならないだろうか?
冷静になって観察するとこの毛,全体は黒っぽく見えるが先端は白いツートンカラーの物も多くある。黒いという点でタヌキとは違うのではと思っていたが,改めて図鑑を見ると足など案外黒い毛で覆われている。毛の長さといい太さといい,やっぱりタヌキの毛ではと思われる。
では一体落とし物の主は誰であろう。見つけた場所(例の泥状河原),足跡,食性からタヌキがやはり怪しいと推理する。ということはやっぱり共食い・・・? こんな事ってあるのかな?
私の想像もここまでで頭打ち。
どなたか情報をお持ちの方,推理好きの方,悩める私にご一報お願いします。
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