ヒ ガ ン バ ナ (狂 詩 曲)

@プロローグ〜転がり込んできた宝物?

小耳にはさんだヒガンバナ

 私はものぐさだ。片づけずに出しっぱなしにしておいて
「アレはどこにあったっけ?」
なんて自分で探していたりして,よくひんしゅくを買っている。
今回は幸か不幸か,その”ものぐさ”が引き起こした騒動のお話。

「みほとけの まわりを飾る ひがんばな」
 この句は小学校の時に宿題でひねった俳句処女作である。ものすごーく苦労した。苦労したから今でも宙でスラスラ言える。その割には,箸にも棒にもかからなく低評価に終わってしまった。
 が,こんな風に小学生でも幼稚園児でも,ヒガンバナは多分誰でも見たことがある。日本の秋を語るとき,このヒガンバナは忘れてはならない存在だ。9月の後半,ちょうどお彼岸の頃,突然咲きそろう。お墓や土手,田圃まわりに鮮やかな朱色の花があちこちにニョッキリ出て帯が出来る様はとても印象深く,風物詩となっている。
 
「ヒガンバナの種を見つけて,嬉しくて球根ごと掘り上げて持っていたんです」
聞いてしまったのは半年以上前のこと。
「え? ヒガンバナって種が出来ないんですか?」
芽が出れば花が咲く,花が咲けば種が出来る・・・その名の通り,種子植物は種が出来て当たり前と思っていた。が,このヒガンバナは例外で,図鑑に「ヒガンバナは普通種が出来ない」と書いてある。この方はそんな「普通種が出来ない」ヒガンバナの種を見つけたという。ない物があった! それは宝,うーん,わたしも秋になったら宝探しをするぞ!
 ヒガンバナの種がどんな物かも知らないまま,そんなお話が頭の隅に引っかかり,季節はめぐり秋となり,宝探しは始まった。
 車で走っていても視線は車道わき,自転車で真紅の花が見えると回り道,
「ヒガンバナね,種ができないけど,もし見つけたらスゴイよ! 教えてね」
子供にも,そう焚付けておいた。

怪しい種?

「ちょっと,スコップある?」

 地面からニョキッと伸びる花茎に種がついている。
怪しい・・・。葉っぱは申し訳程度に根本から出かかっていて,この点が何だか怪しい。かわいい園芸用のスコップを頼んだつもりが,重い大きなスコップが差し出されて驚いてしまった。
 平成11年10月5日,長男が友人宅へ遊びに行った先。Nさんのお宅は集合住宅で,お隣と庭同士がくっ付いている。ふと目に入ったのは,どうみても手入れした様子のないサッパリとしたお隣のお庭。そこから伸びているのが問題の怪しげな種だ。
「あれ,もしかしてヒガンバナ? 種って見たことないんだけど,怪しいねー,咲いてた?」
「うーん,気づかなかったけど・・・わからないわ」
「・・・でも,持ち主がいないのに勝手にもらっちゃまずいよね」
「ああ,大丈夫大丈夫,お隣のおにいさんは忙しくてお花を植えるはずないし,むしろ私が草抜きしてあげてるのよ。」
 30代過ぎた主婦というのは,ご存じのように往々にして遠慮がない。
 初めは先だけポキンと折るつもりだった。でもどうせなら茎の下から・・・でも,球根だって必要かも・・・それならいっそのこと土ごと鉢植えに・・・とドンドンエスカレートして,今は大きなスコップでザクザク掘っている。
近くで見つけた白いヒガンバナ

 知らないお宅のお庭を掘り荒らしているのである。嫌が応にも気分はこそこそ。
「変なモノ埋めてるような気分・・・何とか殺人事件?」
取りあえず,ゴミ袋もナイスタイミングで差し出されたし,お持ち帰りしてゆっくりと眺めることにした。

 帰宅して無事鉢植えにして,ひと安心。座り込んで冷静に眺めてみる。
「なんか変? ヒガンバナの花って,頂点に一つじゃなかったよね・・・」
「うーん???」
「よく見ると,下から少し葉っぱのぞいてる,あれ?こんなにネギのように細かったっけ? それに今まだ周りは花盛りで,コレだけ種が出来るって言うのも早くない?」
子供と首を傾げる。これは実物の花と比べるのが先決だ。
「隣の畑の柿の木の下に,ヒガンバナが咲いているから採ってきて!」
疾風のように去っていったハリキリ長男は,ヒガンバナを手に疾風のように現れた。
「ややっ,違う! 本物は,ほら,やっぱり花が茎から5つも6つも出てる。もし種が出来たとすると頂点に一つだけ出来るわけないよね。」
ガックリ。そうそう宝は転がっていない。
 長男が比較のために持ってきた隣の畑のヒガンバナ。
ポイッ!
 鉢植えにしたに偽ヒガンバナの横に,花を転がして置いた。
 その夜,Nさんご主人からダメ押しとどめのメールが届いた。
「隣に咲いているのを見たことがなかったので,不思議に思っておりました」
やっぱりヒガンバナの種は幻でありました。

ゴミか宝か?意外な展開

 ここまではほんのプロローグ,ここから騒動の本番が始まる。

 長男が持ってきた隣の畑産ヒガンバナ,ポイッと庭に放ったままである。ものぐさな私は片づけ苦手,きれいな花が終わって何日も過ぎる。困ったことに別に珍しいことじゃない。
「そのうちお義母さんが,草抜きのゴミと一緒に処分してくれないかなあ?」
なんて都合のいいことを考えている。
 朝日にサンサンと照らされるは当たり前,ナメクジは食べにくる,雨ざらしにはなる,「ゴミ同然」の扱いである。いつまで経っても茎はしおれていないのが不思議だ。仕方がない,そろそろ捨てようか・・・重い腰を上げて転がっているヒガンバナの成れの果てを拾ってみると・・・
「??? お,おーっ!」
なんと,6つの花の後のうち,一つが膨らんでいる!
 普通は花の終わったヒガンバナの子房は萎びて枯れてゆく。そのはずの三角形の子房がぷっくり饅頭型をしているではないか!
 子房の中で大きくなっていると言えば,もしかして種?
 カエルが王子様に,アヒルの子が白鳥に,数々の変身物語の様に大きな期待をかけて扱いは一転する。
”さわるな・たいせつ!”
 遊びに来た幼児にも通用するように,ひらがなで書いたラベルを付けておいた。ここにきて子供達に戦い道具にされても,ゴミに出されても困る。そうそう,乾燥も禁物,水草観察用の”簡易水田in鍋”に挿しておこう。
 さあさあ,観察の用意万端。 ゴミか宝か? 
 これからが楽しみ楽しみ。

    
    ★ ヒガンバナ
         
A恐るべし ヒガンバナ秘密(平成11年12月10日頃更新)
                                  
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