か ら 〜 園 庭 一 騒 動


 集団心理というものか,人だかりが出来ていると気になって仕方がない。

 平成11年10月19日,園庭で先生と子供1クラス分の小さい輪がクルリと見える。
気になる。
どうも気になるので,聞き耳を立てつつ通り過ぎようとすると・・・
「・・・動いてる」
「カエルが・・・口の中に・・・」
「落ちて・・・」
 途切れ途切れに耳に入る言葉を総合すると,どうも輪の中心に居座るのは生き物らしい。
と,思ったときには既に園児と肩を並べていた。

「えーっ?」
 それはカエルだった。だたのカエルじゃない。なんと園庭にウシガエルがいたのだ。

 次男の通う幼稚園の園庭は結構広い。この現場から,生息に適すると思われる用水路までは50m以上もある。まさか冒険好きなウシガエルにしても,ピョンピョンして来る間に脱水症状だ。

「K家のウシガエル騒動記」より

 まてまて,園児の中にも生き物マニアの子がいて,ナマズや雷魚やウシガエルを次々持ってきたことがあった。このウシガエルも彼の持参品? 飼育ケースからの逃亡者か? でも,最近はテナガエビを最後に見てないなあ。
 うーん,一体どうして???

 目撃者を質問責めにしたい気持ちをぐぐっと押さえつつ,先生と園児の会話に耳を傾ける。
「大きなカエルね。ウシガエル? やっぱりそうね。」
「カラスが落としていったの」
「カラス〜?」
 どうも,目撃者は園児らしい。
「○○君,カラスがカエルを口にくわえて持ってきたの?」
 先生,なかなかナイスな質問です! そこ,そこです。
「ううん,手に持って飛んできてね,ここに置いて,また飛んでいったよ」
「重かったのかなあ〜?」
 侮るなかれ,ウシガエル。
 ドテッとして重くて動きそうに見えて,近づこうものなら”ギュッ”とか”グエッ”とか叫んでササッと水に潜ってしまう。従って”ブォーンブォーン”という牛のような(?)鳴き声はよく耳にするが,
実際にはまじまじとはお目にかかれない。
 そんな警戒心の強いウシガエル,一体どうやってカラスが捕まえたのであろうか?
 カラスと思ったが実はトビだったことも考えられる? 
 うーん,でもそこは知恵の働くカラスのこと,技あり一本か?

「口にカエルがいるー,ほら!」
「不思議なことにね,カラスのお土産でしかもカエルがカエルを食べてるのよ。」
・・・えー????
「口のこれ,カエルの足じゃろー?」
 今は保育中,傍観者に徹するつもりが我慢できず,つい手のひらに持ち上げる。
「おーっ!」

「うわあ,おばちゃんスゲー!」
「ギャ〜」
 ウシガエルを持っただけで私はヒーローか? 変人か?

 ウシガエルの暴れ様は「K家のウシガエル騒動記」のKさんからよく伺っていた。それなのに私の手の中にいるウシガエルは借りてきたネコのようにおとなしい。
 ウシガエルの口からはみ出しているもの,”カエルカエル”と言われてそうも思ったが,食道からつながった胃が飛び出したもの? 「カエルの足」と教えてもらったものは,どうやらウシガエルが飲み込んだコオロギ等の足に見える。お尻からは圧迫されたのが原因か,直径1pの風船状のものが出ている。もしかすると,事故に巻き込まれ,胸腹部圧迫で息絶え絶えだったところを目敏いカラスに捕まったのかも? ますます謎である。
 これが小橋家なら洗いざらい全部解説するところだが,ここは幼稚園,先生の声かけで柔らかに事が運んでいる最中,過激な発言は慎もう。先生には,身ぶり手振りでお腹を押さえたり目を白黒させたりしてコッソリ伝える。先生も「あ〜,やっぱりねー」と合図ちを交わす。
 
 どうひいき目に見ても先は短いような気がする。
「カラスの方がこのカエルより力が強かったのねえ・・・」
「眼,つぶってるよ・・・」
「じゃあ,溝に放してあげようね・・・。元気になるかなあ?」
先生に水に入れてもらったウシガエル,子供の声援を受けてか,園児に投げられた小石が痛かったか,つぶりかけた目を再び開く。
「ああー,目を開いたよ,元気になるかなあ」
 もうダメだとわかっていても,”ガンバって!”と願わずにいられない。
 先生も園児も私も,ウシガエルが再びひとみを閉じても,浮いたまま動くことがなくても,もうダメだとわかっていても,なかなかそこから離れられなかった。

「ねえ,幼稚園の時の”空からウシガエル事件”覚えてる? あれ,ビックリしたねえ」
 この子達が大人になった時,聞いてみようと思っている。


今回は付録「2つの小話」付き!  短いので安心してお楽しみ下さい。
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空からの落とし物 2
植え込みの怪


         
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