文月(ふづき)
田植えから3週間がたち、オオグロの苗は大分大きくなった
植えられたばかりの時は、水面が広がり、苗は今にも水没しそうであったが
20日余りでしっかり定着してきた。タニシの被害もなく、苗は生えそろっている
水面と稲が田んぼの面積を、半々くらいで分けるようになった
田植えがすんだばかりの苗は、まだひ弱。二十日もたつと、株が張ってしっかりしてくる
これから先は、「間断かん水」の時期で、水の調整をしながら分株を見守る
水調整をしながら、1株が23~27本くらいになるまで増やすそうだ
理想の本数は1坪で1000本ぐらいとされている
稲は植え方が薄いと、当たり前だが収量はあがらない
かといって、本数を増やせばいいかというと、それも限度がある
試験場などで試行錯誤された結果だろうか、1000本/坪が推奨されている
この密度で栽培すれば、(病害虫被害がなければ)反当10俵弱の収穫
生産者にとっては最良の結果が得られるということだそうだ
株数が適量に増えるまでは、間断かん水が続く
その時期は、畔の草刈りも重要な仕事
畔の草刈り・・厳しい暑さの中での草刈りはハードな作業である
何でもかんでも刈ればいいというのではなく、田んぼ周辺の生態系を考慮しながらの作業になる
短く刈りすぎると、畔に生息する生き物の居場所がなくなるからだ
畔の生き物の中には、田んぼの害虫を駆除してくれる有益なものもいる
機械化や効率的な作業で近代的な農業になってきているとはいえ
米作りは、基本的に自然の中での営まれる仕事である
自然界をまったく無視してはうまくいくはずがない
作業効率を高めながらも、自然界の仕組みを上手に取り入れ
費用対効果を最大にするというのが、Sさんの目指す米作りなんだと思う
ジャンボタニシの被害が甚大、タニシに食われて稲がなくなっている田んぼ。岸には卵がびっしりと張り付いている
梅雨末期、最近はどこかで災害が起きないと梅雨が明けないという状況になってきている
が、まさかこの地域で、土砂崩れ・洪水被害がおきるとは思ってもみなかった
「災害の少ない県」をウリにしていた当県である。危機感の希薄さが被害を拡大させた感もある
6月末から、梅雨らしく雨が続いた。7月に入り、台風7号接近で更に雨の日が続いた
5日は、特定検診の日だった。朝から曇っていたが、ウォークの後くらいから雨になった
特に気に掛けることもなく、いつも通りに検診を受けに行った
各地に大雨洪水警報や避難勧告・指示が出始めたが、危機感など全然なかった
6日金曜日、午前9時過ぎに当市が土砂災害警戒対象地域になった
雨は続ていたが、危険を感じるほどのものではなく、その日もJAや歯医者に行き、普段通りの生活をしていた
日が暮れた頃、カトビラ坂のT字路に消防車が赤色灯を回しながら待機し始めた
大池に決壊の恐れでもあるのか、とちょっと心配になった
21時35分、当市に大雨特別警報が出される。カトビラ坂に車・人が増えてくる
〈エッ!本当に池の土手が崩れそうなんだろうか。もしかしてヤバイ?〉
なんか異様な雰囲気になり、万が一のことを考えて、避難準備だけはしておくことにした
〈あれだけの人が警戒してくれているのだから、何かあったら知らせてくれるだろう〉と思い
念のため、2階の池から遠い部屋に布団を持っていき横になった。外は益々慌ただしくなった
ダンナはテレビにくぎ付けで、情報を得ようとしていた。〈まだ降るんだろうか・・〉
とても寝ている状況ではなくなって、下に降り、PCで雨雲レーダーの映像を見ていた時(11時頃だった)
「ドサッ」という音が聞こえた。そんなに大きな音でもなく、大型自動車がそばを通ったのかと思った
直後、近所の人と消防団の人が「裏の崖が崩れた!避難して!」と切羽詰まった様子で言ってきた
パジャマのままだったが、その上にカッパを着て準備していた避難リュックを背負い、急いで外に出ようとした
が、一瞬冷静になった。電気を消し、PCの終了を確かめ、戸締りを確かめて、外に出た
こんな時、冷静になるって難しい。よくあそこで、一瞬でも落ち着けたのが不思議な気がする
隣りの家には高齢の夫婦が住んでいる。一緒に避難しようと声掛けをしたが
「娘の所に行く。今、電話をした」というので「気を付けて」と言って車に乗る
消防団の人に「どこに避難する?」と聞かれたが、そんなこと考えていなかった
「取り敢えず、小学校に」と告げて、自宅を後にした。途中、自販機でペットボトル2本ゲット
小学校に着いた時、大きな音がした。ダンナは雷が落ちたと言ったが、私は大規模な土砂崩れがあったのかと思った
それが例の工場の爆発音だった(23時35分)。かなり後になって分かったことだが・・
この豪雨災害の後、「『ハザードマップ』を知っていますか」というアンケート調査をしたところ
「知っている。見たことがある」と答えた人は約20%だったらしい
その他、「知っているが見たことはない」とか「知らない」とかいう項目もあったようだ
私の場合は、「知っている。見たことがある」と答えるが、「何が書いてあったか忘れた」
というのが、本当のところだ。災害に対してほとんど危機感を持っていなかった
今、改めて、市が配布した「ハザードマップ」を見てみると、我が家は土石流被害のど真ん中にあった
ご丁寧に、地図上で我が家に赤丸までつけていた。その時は確かに危機感を持っていたのだ
が、何年も何事も起こらなければ、忘れてしまうものなのだ、人間は
そして、忘れた頃に今回のような大災害に見舞われることになる
「情報が多すぎて、何が一番大事なのか分からなくなる」という声も聞かれる
情報を精査して、自分にとって大事なものは何かということを平時に考えておくことも大事なのかと思った
今回の土砂崩れで避難経験をしたが、土砂崩れがなかったら、今でも他人事と思っているだろう
本当にわが身に危機が迫らないと、本気にならないものだと痛感した
予行演習以上の貴重な避難訓練だった。教訓《逃げることをためらわない》
工場の爆発があった時刻に小学校へ到着し、そのまま翌朝5時過ぎまで避難していた
近所の人たちも次々とやってきて、結局その夜小学校へは約100人の人が避難してきた
《緊急避難》などということは今回が初めてだったが、実際に経験してみると
災害や避難に対しての認識が、いかに甘かったかということがよく分かった
その一つが、避難準備品
東日本大震災や熊本地震、最近頻発している洪水被害を見聞きするたびに
《もし自分が避難することになったら何を持ち出すか》と、考えてきた(つもり)
非常持ち出し品セットも購入して、《備えはバッチリ》と安心していた
が、非常持ち出し品は買ったままで中身の点検もせず、そのまま長い間放置していた
今年5月にやっと全部点検し、中身のリストを作り、期限切れになっていた保険証の写しも交換した
災害はいつ来るか分からない。やはり《年に一度の見直し・点検》は怠ってはいけなかった
非常持ち出し品は、常に玄関近くに置いているが、その時でないと準備できないものもある
通帳や印鑑、財布・免許証、薬などは日頃使うものなので、いざという時にリュックに入れないといけない
車のカギ、USBメモリー、役目上預かっている通帳などは、真っ先にリュックに放り込んだ
2つのリュックを持って避難したが、後になって、持ち出すのを忘れていたと気づいたものが
バスタオル・タオル・下着・・タオルを忘れていたのは不覚だった
平時、冷静な時に、もう一度見直してみなければと思っている
《また今度、暇な時に》と言わずにすぐに・・(う~ん、危機感が下がってきている、ヤバイ!)
豪雨災害やら酷暑続きで、オオグロの稲を見に行くのがおろそかになっていたが
田植えから40日余り過ぎて、稲はどうなっているか、先日見に行ってみた
Sさんの話では、今は土用干しが終わって、幼穂形成期までは「間断かん水」の時期だということだ
土用干しは稲の分株を止め、土中のガス抜きをするために必要だという
水抜きをするために、田んぼの中に溝を掘る。バイクみたいな乗り物で掘っていくらしい
残念ながら、その現場は見ていないが・・
しっかり根を張って元気に育っている稲 田んぼの中に水抜きの溝が掘られている
強い日差しの中で、田んぼでは稲が青々と元気に育っている
近隣で大きな洪水被害が起きたなんて思えないほど、平和な風景が広がっている
人間を含めすべての生き物は、自然の恩恵を受けながら生きている
ありがたい自然は、しかし、時として牙をむく。それもまた自然の営みか
地震・台風・水害・土砂災害・・これだけ科学が発達した現代でも、これらの災害をゼロにすることはできない
我々にできることは、災害が迫ってきたら、只々逃げることだけなのだ
週末、台風が来る予報が出ている。逃げる準備をしておこう
オオグロの稲は順調に生育している 株の根元にジャンボタニシの干からびた卵がくっついている