葉月(はづき)


8月に入るとお盆に向けての色々な準備が始まる

まずは「棚経」、檀那寺のご住職が檀家を訪れ、先祖供養のお経をあげてくれる

前のご住職はご老体で、黒いこうもり傘をさして歩いて回られていたが

今のご住職は、ウチの息子と同い年の若者で、スクーターで颯爽と回られる

暑い中でのお務め、ご苦労様です

お盆には、縁の人たちがお参りに来られる

お墓までの道を掃除し、お墓もきれいにもしておかなければ・・

この辺りでは、株内でまとまって墓地を管理しているので

お盆のお墓掃除も、みんなで協力してやることが多い

家では、祭壇をかざり、盆ぢょうちんを出し、お供えをして

ご先祖の霊を迎える準備をする

昔は、それぞれの家の軒先に六角灯籠が下がり

ロウソクのうすぼんやりした灯りが、もの悲しさを醸し出していたが

今では、家の中で、電灯をともした灯籠が吊るされている

いや、初盆でもない限り、それすら見ることは少なくなったかも


夏の盛り、暑さをものともせず〈百日紅〉が咲いている

雨が降らなくて、他の花々はぐったりしていても、元気いっぱい

ピンクの花の色は、燃えているようにも見え、涼しさどころか〈暑苦しい~〉と

言いたいけど、何故だかあの花を見ると元気が出る。不思議な花だ



立秋の頃になると、ハギの花が咲き出す

秋の七草にも出てくる花で、この花が咲き出すと、もうすぐ涼しくなるなあと思う

(今年は一向にその気配が感じられないが)

猛暑はうんざりだが、少しずつ季節は変わってきている

日の出は夏至の頃より30分も遅くなっている

山の端に夕日が沈むのも、ひと頃よりはずっと早くなった

日が沈んだ後は、ほかりは残るものの、涼風が吹き出し

暑いかった一日の終わりに、ホッと一息つける

夜、虫の音が聞こえる。音に秋を感じる。もう少しの辛抱・・




13日、お墓にローソク・線香・香ノ木・お供えなど持ってお参りに行く

線香の香りとお経は、仏さまにとっての一番のご馳走なので、心を込めてお唱えする

お供え物を狙うカラスが、早々と近くの木にとまり、「早く終わって帰れ」と急かす

〈ご馳走のありかがよく分かること〉・・いつもながらの素早い行動に感心する



15日には、お寺で「万燈会」が行われる

ご住職からは「どうぞ、光の祭りにお運び頂きまして、

一燈でも多くのご献灯をいただければ有難く存じます」との、ご案内をいただきました

何年か前までは、夕方になると出かけていたものだが、

最近はお寺の階段を上がるのがおっくうになり、失礼している

境内の闇の中、灯籠に火が入ると幻想的な風景が浮かび上がる

送り火をしてご先祖様を送ると、お盆の行事は終わる

お盆に帰省していたお客も帰っていき、里山はまた静かな生活に戻る


田植えを終えてから10週がたった。オオグロの稲はどうなったかなあ~

そろそろ茎が膨らんできているだろうかと、様子を見に行ってみた

7月末、土用干しをして分けつを止め、その後は間断かん水をしながら

成長を見守っていたオオグロの稲は、夏空の下で元気に育っていた

 
   しっかり育っているオオグロの稲     根元が少し膨らんできているように見えるが・・

この先、出穂までは水管理が大事で、切らせてもダメ、あり過ぎてもダメなのだ

常に水に浸しておくと、根の活力が低下して、品質が落ちるし

水が足りないと、穂の生育に影響が出る。なので、間断かん水が大切になってくる

おいしいお米を作るためには、多少は過酷な条件下において、稲を頑張らせないといけないそうだ

分けつが終わったころから、茎の中では穂の赤ちゃん(幼穂)ができはじめる。幼穂形成期である

茎の中では、穂の赤ちゃんがだんだん大きくなっていく。この時期を穂ばらみ期という

穂が出る20日くらい前この時期は、収量とおいしさに関わる重要な時期で、肥料の多寡も大事になってくる

肥料(チッソ)を遅くまでやると、収量は増えるが、米の中にたんぱく質が残り、食味は落ちる

米の中には、当たり前の話だが、デンプンがたまった方がおいしいのだそうだ

肥料は適当な時期まで、適当な量を散布するのがベストなのだが、その見極めが難しい

と、「おいしい米作りコンテスト」に挑戦しているSさんは言っている

さあ、あと少しすれば穂が出て花が咲く。実りの時期も遠くない。楽しみだ


田植えから11週目、そろそろ穂が出る時期なので、オオグロに行ってみた

チラホラと穂が見える。予定通りの成長具合である

穂が出始めると(出穂)、3・4日で田んぼ全体に広がる

穂には花が付き、交配し始める。交配は主に午前中に行われるそうだ

稲の花は小さい。穂の先っちょにゴミがついているみたいだ

ちょっと触れるだけで落ちてしまいそう。だから、この時期には田んぼに入るのを控える

花を落とさないように、交配を邪魔しないようにと

米作り農家がこの時期の台風を警戒するのもそのためだ

暑い夏の間、汗水たらして世話をして、これからという時に、花を散らされたらかなわない

無事に受粉を終えると、後はしっかり実ってくれるのを待つだけだ

台風の襲来がありませんように、病害虫の発生がありませんように

最後まで手は抜けないが、この先は実りに向けての仕事なので楽しみでもある

 
8月27日、田植えから11週目、ちょっとだけ穂が出始めた。(写真左)  
8月30日、出穂が田んぼ全体に広がってきた。穂の先に白い小さな花がついている(写真右)