短歌
感じたことなどを自己流で…
偲 ぶ
在りし日の明るい笑顔よみがえる形見となりし衣服まとえば
客ありて作る夕餉にふと思う亡き母たちの好物なりと
娘(こ)や孫と賑やかに行く船旅は遠き昔の母と吾なり
光る海おむすび型の島浮かびクラゲはゆらリ波のまにまに
水平線沈む夕日は赤々と火の玉となり波間に溶けて
波高き人生泳ぎようやくに凪に出会うも時には時化て
平凡が何よりなのと口癖の彼女の人生波乱に満ちて
テレビにて母校エースの訃報知る遠き想い出あの甲子園
孫
里帰り日時知らせる子の電話するも受けるも声は弾みて
電話機の向こうの孫は10ヶ月かわゆき声で「アー」とひと声
ウニュウニュと孫の言葉は宇宙語か通訳ほしいウニュウニュウニュ
孫来るわが家一変喧騒の渦巻き起こり疲労は深し(大袈裟過ぎる?)
家中に幼い声が溢れてた昨日はもはや遠くになりか
孫二人揃えば常の静けさは蝉も加わり一度にはじけ
過ぎ去ればあっという間の10日間かわゆき声は電話の向こう
応援のママ達の声姦しい孫活躍の野球のビデオ
日々の中で 1
惑います日頃疎遠の彼女から頂き物にて真意いずこと
腰かがめひたすら草刈る人のいて人ごとながら腰痛心配
気に掛かる韓国旅行の食べ放題彼女の胃袋異状なしやと
六十路なり周りそれぞれ年老いて今日も行きますお見舞いはしご
理不尽を怒れば顔も歪みます視点変えよう美人?台無し
前売りの舟券売り場の面々はペンを片手に考える人
白波と飛行雲との平行線モーターボートも飛ぶが如くに
ジャンバーは風はらませて真ん丸にバイクと共に今にも空へ
乗客が一人っきりの路線バス車体ゆすってゆらりと曲がり
つる草は電柱しかと絡めとリ我が物顔に枯れた後まで
同 窓 会
どの顔も当時の面影残しつゝしっかり老けた還暦の宴
パ ソ コ ン
寝転んで読書が趣味の六十路から突如目覚めてネットの世界
錆付いた脳に負担をかけ過ぎか夢で飛び交うパソコン用語
幸いは操作教える次女がいてメール受け取る長女いること
パソコンに熱くなりすぎ首の筋痛めて思うもう年なのね
ウォーキング
ウォークを日課と定め定年の夫と共に健康作り
鳥の声木々の囁きその匂い深山の森に日々親しめり
幽玄の世界織りなす満開の桜眺めつ歩く幸せ
散り急ぐ桜の次は山ツツジパープルピンクの色も優しく 毎日の深山ウォーク行き会うはふっくら笑顔の熟年夫婦
連翹の花木に添えし一句あり真似て私も迷句をひとつ
山ひとつ映す水面に白鳥は気高く優雅孤独に浮かび
木漏れ日の小道を行けば柔らかな若葉のシャワー雛鳥の声
うっすらと霧のベールに包まれて神秘的だね今朝の深山は
虫の声深山の森に広がるや時折雉が「ケーン」と合いの手
濃い霧に抱かれ歩く山道にふと偲ばれる若き日の頃
秋色の深山ひときわ風情あり絵心わけど才ままならず
朝焼けの公園ウォーク紅葉の鮮やかな赤 炎の如く
ススキ野に季節忘れた山ツツジ狂い咲きなの自己主張なの?
落ち葉踏み未だ明けやらぬ公園の池を巡れば鴨は騒ぎて
寒気つき流れる詩吟朗々と深山の森に溶けて消え行く
きっちりと役目果たして柿の木は裸木となり寒風受けリ 明け方の空の変化の美しさ丘の公園ぐるり巡れば
日々の中で 2
空の事故告げるニュースに何気なく見上げる彼方飛行雲あり
薄墨で描いたような空の雲あるかなしかの動きを見せて
電線にカラスと鳩がひと休み1メートルの幅を保ちて
人住まぬ家ではあれど庭先のピラカンサスの赤はこぼれて
山裾の家並み陽に映え輝いて幸せ振りを競うが如く
夕焼けは家の中までセピア色物悲しさもタイムスリップ
歯科医にて診察椅子に90分夕暮れなれば気持ちもそぞろ
網戸より夕餉の匂いするするとお隣今日も焼き魚なり
風流も時を得てこそ愛でられる寒空に聞く風鈴侘びし
水遣りを忘れて枯れた松の鉢 松喰い虫ねと幼子言えリ
夕立は雷さまと共に来て梅雨明け宣言高らかに告げ
出 来 事
「ただいま」と帰る人いる幸せを今更に知る隣家の不幸
ナンテンを見やり彼女の言ったこと「難を天」への願いは空し
家うちの変化を君は庭先で知るや知らずや今年も赤く
交 通 事 故
美しき孝厚き子のあの事故は一瞬の差で免れしものを…
悪夢なの逃れられない運命(さだめ)なのそれとも神の思し召しなの?
痛ましや意識無き子を看取りたる老いしふた親小さく見えて
目覚めてよ奇跡起これと待ち望む皆の願いは届かぬものか
名残をば惜しむが如く10ヶ月眠りつづけて旅立ちて行き
人生は無常の説法実感し日々の生活大切に思う
呟 き
時として知りたくもなく言いたくも 知らぬが花よ言わぬも花よ
現実は思い及ばぬことなれど夢の中まで保身歯痒し
小心は生まれついてのものなれば蝶の如くに脱皮は無理ね
ものごとは思惑外れ多けれど何とはなしに型は整い
なんとなくぼんやり過ごす今日なれば時は遅ち遅ち長ーい一日
情けなや久方ぶりに出会いしにさて名前はと考えあぐね
生来の貧乏性か買い物も思案が多くて疲れるばかり
姦しや10人10色個性あり ましてや熟女収拾つかず
期待などしないようにと戒める成れば素直に喜べばよし
当事者でないから出るのよその言葉利害絡めば意見も変り
無花果を食べて小さな幸せを感じる私あ〜!安上がり
偽善者の貌が身につく何時からか片隅にいる本音や愛し
他人には分からぬ悩み人持てり知らぬ幸せ人は持つなり
おさなごに自分のことは自分でと教えし今はわが身に願う 熱き湯にひたりて思わず極楽と呟く吾は老いの一歩か 訳ありの彼の葬儀は昔日の恨みつらみも時は流すか ニワトリか卵が先かと不毛なり言わずもがなの本音がちらり 雪
温暖の地に珍しく降りしきる雪の舞見る炬燵の桟敷
目覚めれば白一色の雪化粧 踏めばサクサク気分は童
あちこちの残雪キララ陽を受けて元の色へとゆっくり戻り
日々の中で 3
目の下に海鳥群れる瀬戸の橋 秋のひと日を母を訪ねて
図書館にこの身を置けば胸弾む あれもこれもと心は豊か
造船の景気も今は昔なり 残骸さらす小さなスナック
傍らの鼾今夜は凄まじく風の音にも負けず劣らず
婿殿が贈ってくれし活きズワイ残酷なれど大鍋の中
茹でたてを口に含めばほんのりと甘き味して幸せ気分
冬晴れにさぁ頑張ると腕まくり蒲団ふっくらガラスはピカリ
フィナーレを色鮮やかに装いたる紅葉にそそぐ夕日のライト
音楽を聴き黙々と夕餉取る吾一人には広き食卓
静かなリ唯静かなりこの夜は吾一人にて動く音のみ
20キロ市民ウォーク完歩して満足感と足の痛みと… 寝そびれて来し方行方巡らせば愈々冴えて眠りは遠く 故 郷
すっぽりと城山(きやま)の頂き霧の中 山裾長き姿美わし
鮎躍り清流溢れし綾川もダムに止められ雑草茂る
故郷の山の形に変化あり削り取られし山肌哀れ
盆近し無人駅から見える墓地 清掃勤しむ婦人がひとり
山の背を茜に染めし夕焼けも褪せて寂しく心も寂し
声高な讃岐言葉よローカルの車窓流るは稲穂の緑
満足を背中に見せる農夫あり稲穂のそよぎ見やりながらに
話し声遠く近くにバスの中 ゆらリ揺られて夢か現に