TOPへ「鬼の橋」 伊藤 遊 作
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| あらすじ 平安時代の冥界往復伝説の主人公、小野篁(おののたかむら)の少年時代をめぐって、ファンタジーが展開する。 京都五条橋に深い愛着を持ち、単純だが自分の生き方にはまっすぐな少女・阿古那(あこな)、片方の角をおられた 鬼、非天丸(ひてんまる)と言う魅力あるキャラクターを配し、篁少年の大人への成長のドラマが語られる。 |
感想
私は結構時代物が好きで、子供の頃某国営放送がやっていた「天下堂々」と言う
ちょっと変わった時代劇のファンだったし、人形劇でやっていた「南総里見八犬伝」なんかも
なめるように見たし、と、そう言う世界に入りやすい土壌があるのは認めます。
宮部みゆきも、時代物系は特に好きだし。だからちょっと贔屓目かなと自分でも思います。
現代物よりも良いかもしんない。ファンタジーなりやすいもんね。
私の大好きな、中山恒にも、「三人泣きばやし」や「ムサシ早手流」と言う時代物があります。
これもいいよぉ!
おっと、いらない話が過ぎたでしょうか。
まず読んだ印象は、杉本範子の「今昔物語ファンタジア」ってご存じでしょうか?
今昔物語を題材にたくさんの短編を書いていらっしゃって、まずはそれを思いましました。雰囲気とか。
時代もまさにそう。あちらはかなり大人の話でしたが。人間って変わらないよなぁとかしみじみ・・・。
確か講談社文庫に入ってたと思うけど、・・・私が読んだのはもう20年近く昔だからもう無いかなぁ。
さて本編ですが、主人公よりもやっぱり、阿古那と非天丸の話が(サイドストーリーなんだけど)良いのです。
阿古那は家族全員と死に別れて天涯孤独だが、大事な橋を流されることから守ってくれた非天丸(実は鬼)
と一緒に暮らしはじめる。鬼なのに、阿古那の優しさ、純粋さにふれて、一緒に暮らしたいと願う非天丸。
本来なら食われる人間、食う鬼、と立場がはっきり分かれるはずの二人だが、阿古那の一途な思いは、
小さな仏のように非天丸の心に宿っていく・・。
今回何と言っても心に残った場面は、
生きた物しか食べられない非天丸が夜中に阿古那の顔を見ながら
ぽたぽたと涎をこぼしながら涙もこぼしていたところ。
もう何とも切ない。
そして、それを薄目あけて見たが、気付かない振りをしてやる阿古那。
必死での鬼の本性と戦っている鬼と、それを知りつつ見て見ぬ振りをして暮らす少女。
その生き様が何とも切なく暖かい一冊でございました。
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