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千葉出張
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... 「ニコニ・コモンズ」運用スタート >画像や動画、音声作品を投稿したいクリエイター(プロ・アマ問わず)は ... 良いと感じたAppStoreの無料アプリ@iPod LOVE http://ipod.item-get.com/2008/08 ... 「値上げ」困った 穴広がり音程に狂い
家を出た理由はいろいろある。それが許されたのは、両親にその全てをぶちまけたからだ。
―― この家にいたくない。
―― しばらく、パパとママから離れていたい。
―― やりたいことが出来た。
―― だからこの家にいたくない。
―― それに、この家にはドラえもんとの思い出が強すぎるほど残っている…
結果、引越し費用と最初の月の生活費。そしてアパートの月々の賃貸料だけは親などに任せて、その後の生活費諸般は自らのバイト
で稼いでいた。
最初は向いていないんじゃないかと思っていたコンビニエンスのバイトだったが、思ったより居心地がよく、今のところ順調にいっている。
そして、夢に向って邁進している…ような気がする。
「ただいま~。」
だれもいない1Kの部屋に向って言うのび太。後ろからジャイアンが
「おかえり~。」
ととぼけてみせる。
短すぎる廊下をとおって、部屋に入る。荷物を置き、マフラーや上着などを脱いでハンガーにかける。ジャイアンも後から部屋に入ってき
て、荷物とマフラーだけを置いて早速部屋の片隅にある本棚に張り付いた。
「好きなの持っていってもいいよ。」
「おぉ、遠慮なくそうするぜ。」
そしてジャイアンは本棚を物色し始めた。その間にのび太は先ほど買ったガシャガシャのカプセルを取り出して、中身を取り出し始めた。
ガンケシは実家から持ってきた勉強机のすみに並べていく。そしてカプセルは開いた状態で、こちらは机のどまんなかに並べた。
「おい、のび太。」
「なに?」
「お前…こんな難しそうな本を読んでるのか?」
そう言ってのび太にみえるように差し出したのはこの夏から買い始めた自然保護に関する本。
「うん。結構面白いよ。」
のび太の言葉にジャイアンは疑うような視線を投げかけてから、その本をパラパラとめくった。
「うわ。地面の写真と字しかねぇじゃねぇか。こんなんよく読めるぜ…」
「まぁね。」
カプセルを開け終わったのび太は机に向ってなにかをしていたが、その手を休ませないまま、続けて喋った。
「ジャイアンも家業継ぐつもりならそれぐらいの本、読めたほうがいいよ。」
「そういや、とうちゃんの部屋にも分厚い本があったな…すげぇホコリかぶってたけど…」
「ハハ、想像つくよ。」
ジャイアンはその本を本棚に戻して、ふたたびマンガを物色。前から貸していたマンガの続きと、新しい別のマンガを一巻から三巻まで。
それを抱えてのび太の所までいく。そして10冊ばかりの本をのび太の机に置くと、
「これ借りるぜ。」
「うん、いいよ。」
のび太は見向きもせずに言った。ジャイアンが覗き込むと、のび太はA4のノートを横に4つに切ったような横長い紙切れに、なにかを書
いていた。
ジャイアンは思わずそれを声にあげて読む。
「ありがとう?」
「うわ、見ないでよジャイアン。」
慌ててその紙を手の中に隠すのび太。でもジャイアンはさも平然に
「いや、見えちまったもんはしょうがねぇだろ。で、なんだ。それ?」
「ジャイアンには関係の無いものだよ。」
「ケンカ売ってんのかよ…」
言って、ジャイアンは胸の前で右手のこぶしを左手の平に何度も打ち付ける。素振りオッケー。
「ちっちがうよ。」
「なにが違うってんだよ?」
ジャイアンは指をパキパキならす。戦闘体勢オッケー。
「正直いわねぇと、明日学校で『のび太が俺の目の前で好きな女の子にラブレター書いてました。最初の一文はありがとうだってよ!』て
いいふらすからな。」
そして振りかぶる。砲撃準備完了!
「わ、わかったから。言うからやめてよ!」
「よし、言ってみろ。」
と言っても、振り上げたこぶしは下ろさない。
のび太はそのこぶしをチラ、チラ、と見ながら…
「でもなぁ~。これ言うとなぁ~。」
「早く言えよ。」
「それならジャイアン。手伝ってくれる?」
一瞬、ジャイアンは目を点にする。そしてすぐに聞き返した。
「なにをだ?」
「これから言うこと。ちょっと一人じゃ大変だから…」
「とりあえず言え。」
のび太はもう一度ジャイアンのこぶしをチラっと見て、そしてさっき隠した紙を広げて。ポツリと言った。
「ドラえもんだよ。」
本当は有無を言わさず振り下ろそうかと思っていたジャイアンのこぶしは、ピタリと止まった。
ジャイアンは自宅で夕食を取った。家族4人が珍しくそろっての夕食だった。
いつも欠けるのはジャイ子。一年ほど前、彼女の描く作品が『夢想の中のおとぎばなし』から『現実により近い恋愛話』へと変わった。つまり痛みのあるストーリーになっていった。
その作品を編集部に送ってみたところ、即読み切りで雑誌に掲載されることが決まった。その雑誌での評判も上々で、いまでは中学生ながらに月二本の連載を持つ漫画家になっていた。
だから、いつもは編集部が用意した仕事部屋も兼ねたマンションで日常を過ごしている。今日はたまたま実家へと帰っていたのだ。
そして食卓は、もともと妹を溺愛しているジャイアンを中心に賑やかな様相を見せた。
夜の7時。のび太はジャイアンの家へときていた。
去年立て替えた家は前のような木造モルタル二階建てではなく、一階の全てを店舗にしたコンクリート建築の三階建て。その見た目も中身もなかなか立派で、ただ平凡に店を開いていただけのこの雑貨屋も、じつは儲かっていたことが伺える。
一階の店自体は小さなスーパーみたいになっていて、奥にレジ。しかし不用心なことに、そのレジには誰もいない。この店に危機感はないのだろうか?
そんな事を思いながら、のび太はガラス張りのドアを手で開いて中に入る。奥のほうで来客を継げる鈴の音がした。
「ハァ~イ。」
と声を立てるのはどうやらジャイアンのかあちゃん。
あいかわらず存在感ふりまく体型をドスドス言わせながら、レジの奥にあるドアから店に姿をあらわした。
「あらぁ、久しぶりじゃない。」
「ごぶさたしてます。」
「タケシでしょ。聞いてるわ、ちょっと待っててね。」
そういって、ジャイアンのかあちゃんは奥に引っ込む。かわりに、ジャイアンの名前を呼ぶ声が二・三度響いた。
「なんだよ、かあちゃん。」
「お客さんだよ。」
そして母子の会話。決してのび太の名前を出さないその一連の会話が耳に入ってきて、のび太は苦笑した。
―― どうやら、また立ち直ってないらしいね。しょうがないか…
しばらくしてジャイアン。もう既に外出用の厚着に着替えていた。こちらも母親に似て存在感を振り撒きまくっている。
「よう、待たせたな。行こうぜ。」
「うん。」
二人は、なにかに追い立てられるようにその店を後にした。
二人はすっかり暗くなった夜道を歩いていた。しばし二人は無言だったが、最初に口を開いたのはどっちだっただろう。最初は他愛もない話だった。
そして…
「ジャイ子ちゃん…」
「おう。なんだ…」
「まだ、気にしてるのかな?」
しばしの沈黙があって、のび太は聞きたかった事をズバリと聞いた。
そして冬の夜の空気に圧されて更に重く圧し掛かる空気…
「あぁ。まだ、気にしてるみたいでな。忙しいのに紛らわして忘れようとはしているみたいだけど、振り切れてない。あいつの描くもん見れば分かる。」
「そう…」
一年ほどの前のあの日の事を思い出す。ジャイ子が中学一年で、のび太たちが三年の…秋だったか…のことを。
全てが終わった後、のび太はジャイアンに思い切り殴られた。
―― なんで、あいつじゃダメなんだ!?
僕の答えはこうだった。
―― ごめん。僕はまだ、そんなことを考えられる状態にないんだ…
その答えで、みんな納得してくれた。ジャイアンも、しずかちゃんも、スネ夫も、ジャイアンの両親も…
その時の自分の惨めさを思い出す。あれから4年も立つのに、まだ立ち直っていない自分。自分の事しか考えられない自分。それに嫌気がさした。それからしばらくして、のび太は一人暮らしを決意した。
でもそのほんの少し前に、のび太は今日のような寒い日に今日と同じ道を走っていた。
あの時は…泣いていたっけ…
のび太の問いに、ジャイアンは笑って気にするなと言ってくれた。
「あいつだって、弱い奴じゃねぇんだ。そのうち良い思い出としてみてくれるって。な?」
「うん……ありがとう、ジャイアン。」
そして二人は目的の公園に到着する。それはのび太とドラえんもんにとって、最も大切な思い出。
そしてのび太とジャイアンにしても、おなじように思い出深い場所。
月の浮かぶ夜の公園。
たった一度だけ、のび太とドラえもんが別れを交わした場所。
そしてのび太がジャイアンに決闘を申しこみ、そして勝った場所…
思い出の、場所。
「よし、それじゃ始めようぜのび太。どこに埋めたんだ?」
「あ、それはこの紙に書いてあるよ。」
と、のび太はさきほどコンビニでコピーしてきた一枚の紙切れを渡す。
「なんだこりゃ。また芸術的に汚い地図だな。」
「うるさいなぁ。ハイ、スコップ。」
と言って、安物のスコップを渡す。それから、二つの小さなビニル袋。その袋の一つは空。一つには昼間に買ったガシャガシャのカプセルが五個ばかり。
その地図とスコップと二つの袋の4点セットをジャイアンは受け取って、「任せな。」と言った。
「じゃ、僕はこの公園の東側をやるから、ジャイアンは西側ね。」
「おう。寒いからさっさと終わらせようぜ。」
「そうだね。それじゃ。」
と言って、二人は別々の方向へと歩いた。
思い出の場所。
のび太はいまでも思い出せる。
―― のび太くん。
あの時の、友の言葉を…
―― 僕、未来世界へ帰ることになったんだ
野比家で開かれた、ささやかな送別会。
―― ドラちゃんがいなくなると、さみしくなるわね…
友と交わした、ドラやきでの…
―― 乾杯!
その後…
―― のび太くん、起きてる?
二人で話し合おうと決めて…
―― きれいな月だね
散歩に出かけた。
―― 散歩にでも行こうよ!
歩くうちに公園にきた
―― シーソーだ。
シーソーに乗って、会話を交わした僕たち。
―― のび太くん。僕が帰っても大丈夫?
ドラえもんが初めて見せた、涙…
―― 大丈夫だよ。ジャイアンにだって、勝って見せるさ。
だから…
―― だから…
ドラえもん…
―― ドラえもん…
安心して…
―― 安心して…?
あんしんして、かえってもいいんだよ…
のび太は、一年前に自分が書きなぐった地図を見ながら、スコップで地面を掘った。こんなこと昼間にやってたら捕まりかねないだろうが、今は夜。寒さも手伝ってか、公園の中に人の気配はない。
すこしばかり地面をえぐると、すぐにスコップが異物にあたる感触が手に伝わってきた。手袋をした手で土を軽く払うと現れる、やはりガシャガシャの土にまみれたカプセル。それを土の中から取り出すと、袋に入った真新しいカプセルを出して、代わりにと穴に放り込んで、埋めた。
それを二・三度繰り返して、同じ数だけのカプセルを取り出し、同じ数だけの真新しいカプセルを埋める。
ふと思って、気恥ずかしいながらも土に汚れたカプセルのうちの一つを開いてみた。
「帰ってきてドラえもん!!」
思わず苦笑がもれる。一年前の自分が、未来に向けて残した手紙だ。
未来世界に帰ってしまったドラえもんに連絡をとる方法は、ない。四次元ごみ箱も、四次元ポケットもそのスペアも。のび太が借りていた数個のタケコプターもなにもかも、全てを持ってドラえもんは帰ってしまった。その後には、タイムトンネルも残さず…
そんなドラえもんに自分の気持ちと願いを聞きいれてもらうためには、なにをするのが良いのか。あの時。荒れていたのび太に思い付いたのがこれだった。
いわゆるタイムカプセルのようなもので、もし、万が一、100年後にもこのカプセルが残っていて、万が一ドラえもんの手によって発見されるようなことがあれば、ドラえもんは帰って来てくれるはず。
そう思った。
そして錯乱していた幼稚な頭で考えた。ちょっと高級な紙に地図を書いて僕の家系に残せば、このカプセルはドラえもんに発見してもらえるはず。
かつて自分の祖祖父が、僕が託したビニルの浮き輪を後世に伝えようとしたように…
全然甘すぎた考えだった。
だって、現実にドラえもんはまだ帰ってきてないじゃないか。
これが未来に伝わるのなら、ドラえもんは帰って来てくれるはずじゃないか!?
なのに帰ってきていない。
これは、カプセルが発見されないままに終わったのか、発見されたけど(考えたくはないけど)ドラえもんは帰ってこなかっただけという事だろう。
まったくの、無意味な行動だった。
そしてもしかしたら未来の世界にいる盟友を、苦しませてしまったかもしれない。
それなら、こんな物は無い方がいい…
―― 全部のカプセルを回収した。
「おう、のび太。全部終わったぜ。」
「そう? 僕もこれで最後だよ。」
と言いながら、のび太は最後の穴を埋めながら、さりげなく服の裾で目尻を拭いた。ジャイアンはもちろんその行動に気付いたが、何も言わなかった。
回収したカプセルは、公園内にあった焼却炉へと放り込んでおいた。これでこのカプセルが後世に残ることはない。友を苦しませることもないだろう。
のび太はそう思うと、この五年間。胸の奥につかえていたものがスーッと消えていくようなものを感じた。
「お、のび太。いい顔してんな。どうした?」
「へへ~ん。内緒だよ。」
「へ。まぁ今回ばかりは隠し事を許してやるぜ。」
そして二人は、公園の出口まで来て…
「ジャイアン。」
「なんだ?」
「ここ…覚えてるかい?」
ジャイアンはそこで周囲を一瞥すると、顔をほころばせた。
「あぁ、覚えてる。お前が始めて正々堂々勝負を挑んできた場所だろ?」
「そうだよ。初めてジャイアンに勝ったんだ。」
「ゾンビみたいになってたけどな。」
「あ、ひどいんじゃない。その言い方?」
「だぁ~って、ほんとの事じゃん。」
「でも勝ったことには変わらないんだからね!」
「死にそうだったけどな…」
「あぁ~!もう!」
二人は笑いながら、その公園を後にした。
のび太は気付いていた。
自分が、様々な大冒険に身を任せるうちに、自然の大切さを学んでいたこと。
ジャイアンが自分の雑貨屋を継ぐことに決めたこと。
スネ夫は留学して、経営者たる頭脳を持って帰ってくるだろう。
しずかちゃんは、音楽の才能を開き始めた。
ドラえもんはいない。
この全てが、かつてドラえもんが見せてくれた自分達の世界につながっているであろうことに。
今は道を違えている自分としずかちゃん。この道がどこで交わるのだろうか。それは分からない。
もしかしたら、ジャイアンは雑貨屋をスーパーに成すことは出来ないかもしれない。
スネ夫は経営に失敗するかもしれない。
生まれてくる子供はのび助ではないかもしれない。
でも…
でも
それでも、のび太はこの一年で、ドラえもんが帰ってしまった理由が分かっていた。
ドラえもんは、すべての役目を終えたんだ。
すべての準備は終わっていたんだ。
だからドラえもんは帰ってしまった。
僕はその事に怒りと困惑だけを覚えて、
言うべきはずの言葉を忘れていた。
だから…
のび太は最後に、公園を振り返った。
その顔に、五年越しの迷いはなかった。
今こそ…
「どうした、のび太。」
「ううん、何でもないよ。それより付き合わせて悪かったね。おでんでも食べようか?」
「おぉ~気前がいいなぁ。」
「寒いからね。」
言えるよ。
のび太が新たに残したカプセルの中には、こう書かれた紙があった。
『ありがとう、
ドラえもん』
終
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