耳を澄ませば
「ねぇ…今、この人どんな風に女の人を抱くんだろう…て思ったでしょ?」
僕は助手席から身体を伸ばし、彼女の首筋にキスをしながら、耳元で囁く。
心の言葉を言い当てられた彼女は、驚いたように身を引いて僕の顔を正面から見詰めた。
「僕は他人の心の声が聴こえるの。」
笑顔の僕に戸惑う彼女。
「…駄目なの。私、彼氏としかそういうことしないの。………もう別れちゃったけど…まだ、好きだし。」
僕はもう一度、彼女の小さな身体を包みこむように抱きしめながら、言った。
「別にセックスがしたい訳じゃない。なんだか友達が落ち込んでるのが嫌なんだ。ねっ…こうしてると少し安心するでしょ?」
アルコール特有の浮遊感があったけれど、僕の言葉は本心だった。
「私たち…友達?そう思ってくれてるの?」
僕は彼女に回した両腕に少し力を込めて言う。
「大切な友達だよ。だから…元気を出して。」
彼女もおずおずと僕の身体に手を回して抱き締めてきた。
「ねぇ…思ったより良い身体してる…て思ってない?」
僕が稚気を込めてそう尋ねると、彼女もくすりと笑いながら答えた。
「…………思った。…ねぇ、本当に何でわかっちゃうの?」
僕は答える代わりに彼女の唇にそっと唇を重ねた。
思った通り抵抗せずに僕を受け入れてくれる。
優しいキス。
唇と唇を合わせるだけの、触れると壊れてしまいそうなキスだった。
窓の外にはキラキラと光る夜景が宝石のように煌めいていた。
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