堕天 第2話
「初めは皆で楽しく飲んでたんやけど…。」
カナエが所属しているサークルは、関西にある某有名私立大学の学生が中心となって仕切るイベントサークルで、圧倒的に女子が多い僕の大学の学生も、女の子が何人か参加していた。
大概、そう言ったサークルに参加している男子学生は女の子目当てで、あまりにも露骨にその目的が判るため、僕はそのサークルを毛嫌いしていた。
彼女が楽しそうにサークルの話しを出すたびに、僕は彼女に軽く警告していたが、当然聞き入れる訳もなく、しまいに僕は意識的にその話題を避けていたから、彼女の飲み会の話しもすっかり忘れていた。
その日はそのサークルの大きなイベントの日で、カナエたちも何人かで連れだって参加していたらしい。
サークルには幹部となる学生がいて、当時、カナエはそのうちの一人にキャアキャアと熱を上げていたが、それはアイドルに憧れるようなもので、本当の彼女の気持ちは遠く離れた地元の彼氏のものだった。
「いつも話してた、幹部の彼…。今日も忙しそうだったんだけど、イベント後の打ち上げに私たちを誘ってくれて…。浮かれてた私たちも悪いんだけど、その会場に行ったの。そしたら幹部の男の子たちだけが来てて、女の子たちが居ないから変だなって。で、少し飲んだら帰ろうと思ってたんだけど、ゲームやコールで一緒にいた二人が潰されちゃって。それから…」
彼女は泣き出した。
僕のこめかみにはドクドクと脈が打ち、視界が狭く絞れていくような、激しい感情に満たされた。
彼女の友達二人は泥酔状態で犯されそうになった。カナエは携帯でサークルの女性幹部に助けを求めるメールをこっそりと打ったが、その人たちが駆けつけるまで二人に手を出させないため、自らが彼らのオモチャになった。
ギリギリの意識をなんとか保ちながら、最後の一線だけは越えさせないように抵抗していたカナエは、女性幹部が到着する頃には全裸に近い状態で、殆んど輪姦される直前だった。
飛び込んで来た女性幹部に興醒めした男たちはカナエと二人を解放した。
カナエは意識が戻った二人を自分のマンションに寝かせてから、僕のところへ来たらしい。
「どうしたらいいかなぁ…私。」
僕の頭には慰めや警告を聞かなかったことに対する非難、その幹部たちへの報復が浮かんだが、どれも口にすることは出来なかった。
ただ彼女の肩に触れ、溢れだした涙を抑えることの出来ない彼女を眺めていた。
ポロポロと零れていた涙は勢いを増し、カナエは机に突っ伏した。
「大丈夫…もう、大丈夫。全部終わった…大丈夫だよ。」
僕はかすれた自分の声が空々しく耳に響くのを聞きながら、無力な自分を後悔していた。
その日、カナエは朝まで僕の部屋で泣きはらし、夜が明ける頃、友人の待つ部屋に帰っていった。