雪の大山三鈷峰 途中でgiveup


標高 1516m    難易度 ☆☆    登り110分(上宝珠まで) 下り90分(上宝珠から)   鳥取県
倉敷からの距離   147Km        登頂日 ’99/04/03   ガイドブック 

 中の原10:21−10:40ロープウエイ終点10:46−11:03宝珠山山頂−11:09下宝珠越え合流点−11:34中宝珠−12:16上宝珠−12:30沢−12:45上宝珠13:00−13:32中宝珠−13:52下宝珠13:56−14:04宝珠山山頂−14:15ロープウエイ終点14:28−14:40中の原

登山
 はや4月,大山三鈷峰(だいせんさんこほう1516m)の受け入れ体制が整ってきた頃だろう 昨年と一昨年は4月下旬に尋ねた 4月上旬は初めて

 出発の準備をしていると いままで雲に覆われていた大山北壁が顔を出す 大山三鈷峰の山頂も見えてくる 雪を抱いておりその厳しさに身が引き締まる

 中の原スキー場はほんの少し雪が残っている程度 スキー場の枯れ草は雪に押しつぶされており斜面は平坦 良く見ると青い草が芽を出し次の世代の準備にとりかかっている 蕗のとうが芽を出し春の息吹を感じさせる

 ゲレンデの右端はブナ林 ロープエウエイの終点である上の原のブナ林は樹氷を形成している 樹氷形成の境界がわかるのも面白い

 ゲレンデを登り切ると登山道に入る 雪が残っていそうなので軽アイゼンを履く 雪は思ったより少なく登山道の約20%に雪が残っている程度 ブナの木を取り巻くようにして雪解けが進んでいる 雪がある所と無い所で段差がかなりあり 段差を登るのが容易では無い

 登山道の周辺は樹氷の歓迎である 秋は紅葉を楽しませてくれたブナ林が氷のアクセサリーを付け出迎えてくれる ブナ林の斜面は一面雪に覆われており雪と樹氷と実に美しい世界が広がる 気温がかなり下がってきており 吹いてくるそよ風が冷たい 襟元までファスナーを上げ 帽子は耳を覆い暖をとる この冷たさが雪と氷の芸術を保護してくれている

 そのような中に小鳥の声が ピーピーと口笛を吹くようにして鳴いている こころなしか 春の賑わいがない 仲間を求め淋しく鳴いているようにも聞こえる このような所にも小鳥が戻って来ており 春がそこまで来ている事を感じさせられる

 足元を見ると 小さな獣の足が続いている 二つの足形がならんでいる 親指と人指し指で円を描いた程度の大きさ ウサギなのだろうか? 登山道を延々と続いている

 宝珠山を越え 下宝珠越えで大神山神社からの登山道と合流する このあたりになると山の位置が影響するのか樹氷は見られない 今度は大山北壁が見えてくる すごい迫力である 夏山に比べ迫力を感じるのは何故なのだろうか? ブナ林がすっかり葉を落としており山が良く見えるからか 白が基調の景色で遠近感の判断を迷わしているのか 理由は判らないがその迫力に圧倒される 更に登ると,今度は大山三鈷峰の山頂が顔を出す 見慣れている顔ではあるが 雪を抱いた姿は人を寄せ付けない厳しさが感じられる

 ピークを越えると眺望の良い場所に出る 大山北壁から大山三鈷峰までの大パノラマを300度程の広角で対峙する事が出来る いつもよりずっと近くに見える あと1,2週間で大山北壁の雪解けが進む事だろう 雪解けと共に落石の崩落が始まる その音が聞こえてくるようだ あの雪の下に膨大なエネルギーを蓄えている

 中宝珠越えでご夫婦に出会う アイゼンを装着している ここまでは雪は少ないが次第と積雪量も多くなり ルートも険しくなる 挨拶をして先に行く 足跡から見ると,もう一人先行している方がいる その足跡を追ってゆく

 中宝珠越えから上宝珠越えまで夏山では30分のコース そこを40分少々かけて登る 雪道であり 一歩一歩慎重を要する所がある 先行した方がルートを違って取っており その後を忠実に追いかけていった所もある

 上宝珠越えに出る ここからの眺望はまた一段と素晴らしい 大山北壁が屏風のように目前にひろがる 北壁につづいて大山三鈷峰が展開する 北壁の荒々しい岩肌と大山三鈷峰の前面広がる雪面は実に滑らかでありまさに好対照 北壁から大山三鈷峰につながる尾根は,目前であり 仰ぎ見るようにして見る 目を反対に転じると 上宝珠 中宝珠と越えてきた山なみを俯瞰出来 ここまで登ってきた事を実感出来るこの360度のパノラマは実に圧巻である

 上宝珠越えからユートピアには夏山だと草の間のルートを縫うようにして登ってゆくのだが 雪面にはナナカマドなど少し大きな木の枝が顔を出している程度で全面雪に覆われている 先行している人の足跡をたどりながら進むが 斜面の勾配が厳しくなってくる 涸れ沢に雪が積もっている所だろうか 身体をサポートしてくれるものが無い ピッケルを持っているわけではないので,足を滑らしたら掴まるものが無い 不安なのでそれ以上進むのを止め上宝珠越えに戻る

 景色を愛でていると 先ほど中宝珠越えで出会ったご夫婦が登って来られた 大山三鈷峰まで登るのかと聞くと そこまではきついユートピアにとの事 話をしている内に先行していた方が降りてきた 3パーテイーが偶然一緒になる その方も三鈷峰には登らず ユートピアの少し上までとの事 彼らの装備を見ると 前方に爪のついているアイゼンを装着しており ピッケルも持っている ピッケルで身体の確保が出来ないと あの斜面をトラバースするのは難しいだろうと装備の差を認知させられた 雪山の厳しさも少しは理解を深める事が出来た

 下山も慎重を期する 気温があがってきた為か雪質が柔らかくなり 登りはなんら問題が無かった所でもズズズと滑る 木の枝に掴まったりしてこわごわ降りてゆく 登りで体力を相当使った為か足元が怪しく何でもない所で足を滑らし尻餅をつく 気持ちの緩みかも知れない

 宝珠山の樹氷の状態を見る為 大神山神社に降りずに宝珠山に登る 樹氷は残っているが,気温が上がっているのだろう さらさらと音をたてながら落ちている この景色も風情がある 風情を楽しんでいると襟元に入り込み現実に引き戻される

 上の原のロープウエイの頂上でパラグライダーを楽しんでいる人がいた 風が吹いてくるのを待っている様子 着替えをしながら飛び出すのを待つ しばらくして飛び出す 風に乗っての空中散歩 実に気持ちが良さそう 風に吹かれてとんでもない所に飛ばされるというような心配は無いのだろうか 心配しながら目で追う 巧みに制御しながら着地 着地点には数名人が見えるので予定の地点に着地したようだ

 上の原からはゲレンデに続き 豪円山 孝霊山 そしてその先に日本海の弓ヶ浜と雪山とは異なる穏やかな春の景色が広がる 

  
アプローチ
 180号を北上する 倉敷は晴れ,青空がまぶしい 高梁川は空の青さを吸い取り,春の息吹を感じさせるかのように青く踊るように流れてゆく 心地良いドライブである 新見市街は8℃ 随分と気温があがってきた 北上するにつれ成羽6℃ 千屋5℃ 千屋花見4℃と下がってくる 天気は曇り 雲も次第に濃くなってくる

 明地峠を越える 今年初めての峠越えである 大山がぼんやり存在がわかる程度の視界 毛無山などの中国山脈を見上げると 雪は見えないが樹氷が輝いている 岡山側とは異なり,鳥取側は結構冷え込んでいる様子

 溝口は9℃ この分なら結構暖かくなっているかと思っていると 桝水ヶ原3℃でそうはゆかない 山の気候はかなり厳しい 大山には雲がかかり山頂は見えない 裾野は雪解けが進んでいる 山全体としては雪はかなり残っている いつもの所に駐車