気 分 は
名 探 偵−落とし主は誰だ?
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A 続くときには続くもの
羽根が気になると頭が羽根羽根してくる。
掃除すべく戸棚を開けると,今まであることすら気づかなかった”羽根バタキ”が目にはいる。一応手に取り振ってみる。年代物らしく,ホコリが取れるどころか返って羽根クズがパラパラ落ちて,その辺ゴミだらけ。
「この羽根の曲がり具合,この配色,これは幼稚園で飼っていて目をつつくので引き取られた茶色いニワトリの羽根と一緒ね」
気分はもう名探偵である。
続くときには続くもの。2月15日のこと。
長男の通っている幼稚園では降園後に園庭解放という親子ふれあいの時間がある。私は次男に手を引かれ,人影まばらな幼稚園の隅にいた。
「かあさーん,拾ったよー」
長男が何か持って走り寄ってくる。
「はい!」
手渡すだけ手渡すと,長男はサーッと再び友達の輪に走り去ってしまった。
「・・・・・・。」
ギョギョギョッ! 周りに人がいなくてこれ幸い。血だらけの羽根の固まりがそこにあったのである。血は固まってはいるがまだ赤色を保っていて,そう昔のものではないらしい。思わず放り投げる事も考えたがせっかくのお届け物,次男ものぞき込んでいる。できるだけ平静さを装うが,動揺は隠せない。
「こんな事もあろうかと思って・・・。」
コートのポケットからスルスルとナイロン袋を取り出す。拾いもの対策で,普段使うコートにはいつも入っている,何かと役立つ便利物。こうなったら現場へ案内してもらおう。
「一体どこにあったの?」
遊んでいる長男を捕まえ,現場へ案内してもらう。生々しい血のついた羽根がさらに数枚。
「なるほどね。これはドバトだわ。」
誰もが目にしたことがあろう,ご存じのグレーの濃淡の羽根だ。羽毛などの小さい羽根も入れて全部で27枚。やはり足りない。しかし,広範囲に散乱しているし,昨日今日の強風を考えると,どこかで襲われた物が飛んできたと見た方が妥当であろう。
まだまだ出る出る。2月20日,帰宅して門を入ろうとした時である。フワリ,一枚の羽毛がまるで”コッチヘオイデ”というように風で飛んできた。庭を横切り駐車場の上を飛び,お空の向こうに消えていった。ダッシュをかけたが悔しくも見失ってしまう。
「あーあ,まあいいか,ついでだから庭のチェックでもしよう。」
北側へ回った時である。羽根だ! 白い羽毛が落ちている。さっきお空に飛んでいった羽根がここに?
「おかしいなあ??」
と,北隣の倉庫わきに目をやると・・・。オーッ,羽根散乱しまくり,大きな羽根も小さな羽根も散らばりまくっている。これぞ一匹分! ゴッソリと散乱する。
羽根の色,大きさから,幼稚園でも見た物と同じ,ドバトらしい。
では,犯人は? ここはネコの散策路になっているが,獲物にするには大きすぎる。これぐらいの鳥も平気で襲う猛禽類にしては調理場となっているこの場所は危険すぎるし,狭い隙間に入って隠れるようにして食べたとは思えない。
消去法でいけば,雪が降った朝に”ちょっとごめんよっ”と足跡を残して我が家の庭を横切った事がバレてしまったイタチが犯人ではと推測する。
ぞくぞくと判明する鳥の羽根散乱事件。難航してあきらめかけていた謎の羽根の正体が私を呼んでいるような気がする。「私はだあれ?」「どうしてここにあったかあなたにはわからないでしょう?」「犯人? アンタには10年早いわよ」
これはほっとけない。お蔵入りしようとしていた怪事件に再び迫るべくもう一度チャレンジすることとなった。
残された方法,それはその道に詳しい人に聞くというズルイいものである。だが,もう私の頭では限界だ。自然観察会に参加したときに「小鳥の羽根をいくつか標本にして博物館に寄贈した人がいるよ」との情報をつかむ。
早速その人にメールしてみよう思うがただ
「これは何でしょう?」「これは・・・です。」「そうですか」
では一番美味しい部分がなくなってしまう。その前にちゃんとしたこっちの推測を提示しなくては。
「やっぱりあれはカモかキジのどちらかね」
「だから,カモ鍋だって,言っとるがー。」
「いや,いろんな可能性があるよ。現場近くの家には古ーいカモかキジの剥製があってね,あんまりにも古いから毛が抜けちゃうのよ。窓のお外に向かってパタパタすると剥製の羽根が・・・」
あきれた主人は話半分で消えてしまった。カモ鍋案だって似たもの同士。
さてさて,結果はいかに。カモかキジかはたまたエゾライチョウか?期待は高まる。
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