ヒ ガ ン バ ナ (狂 詩 曲) 

A恐るべし ヒガンバナの秘密? 

どうして? しおれない切り花

 何だかおかしい。何でだろう?

 茎をちぎったヒガンバナ,怪しい実が一つある。ポイッと1週間もゴミとして放っておいたのに,花こそ枯れたものの茎は緑でみずみずしい。ところがである。長男がそのヒガンバナを採ってきた畑をのぞいてみると,ヒガンバナの茎は,もう既に黄ばんで倒れがかっている。
 ふつう,切り花にしてしまうと枯れやすい。が,このヒガンバナはまるで正反対?
 何で? どうして?

 そんな疑問へのヒントとなる本をみつけた。
 福音館書店の科学絵本「ひがんばな」(甲斐信枝さく)だ。
たまたま幼稚園ボランティアの「絵本なおし隊」で,偶然手に取った。
 たがが絵本? いえいえ,されど幼児絵本! 

 調べもので図書館へ駆け込むとき,私は困ったら小学生向けの科学本を探す。これ,おすすめ。知りたいことがギュッと濃縮されているし,専門書に比べて読みやすい。しかも写真・絵も豊富! 単純明快! 専門書では”知っていて当たり前”と飛ばしている箇所も,懇切丁寧に初歩の初歩から説明してくれる。 何よりもいつも「なんで?」と思っている私のレベルにピッタリだ。

 「ひがんばな」問題の箇所は13ページ,さすがに幼児向け,全部”ひらがな”だ。
「ひがんばなは はなびらや しべや くきに のこった ようぶんを きゅうこんに すいもどしているのです。」
!! 吸い戻している? えええ?
 咲き終わった後,花びらも散らないし,雄しべ雌しべも残ったまま,茎もしばらくは立ったまま。そこにある養分を球根は吸収しているという。そのあと,葉が伸びてくる。
 それじゃあ,反対に吸い戻されない場合を考えよう。
茎を切断したヒガンバナのは吸い戻されない。⇒なかなか枯れない⇒ヒガンバナに栄養が残る⇒子房の中の種にも栄養が行く?⇒種が出来る?
 なんだかワクワク。都合のいい推理で面白がってはいるが,今回のような例はたまたまの偶然かも知れない。
 それじゃ,というところでもう一度実験だ。


再び,チョキン!
花も終わると,茎は倒れてゆく

 大体ヒガンバナは勝手に生えている・・・ようにみえる。だから道端のヒガンバナ,少しぐらい折ってもバチは当たるまい。既に半分花は終わっているがまだまだ見かけは健在で緑っぽいヒガンバナ,3本ほどちぎってきた。しばらく経って比べよう。
 縁起を担ぐように,前回と同じく庭にポイッ!と転がしておいた。
 さあ,これでよし! ・・・と安心していたのが大間違い。
4日後だった。朝までは確かにあったハズのヒガンバナが忽然と姿を消している!
「ここに置いてあった,母さんの大切〜なヒガンバナ知らない?」
「知らん,いらってない。」
そうそう,子供はもう慣れっこ,勝手に触ってドカンと雷が落ちそうなものは大体勘で分かる。
「ああ〜,ゴミかと思って捨てたがー。」
 義母だった。消えたヒガンバナは捜索の結果,45Lゴミ袋から無事保護された。
ゴミは捨てられず大切なものは捨てられる。変なものである。
 もののついでに少し早いが比較してしまおう。

左が切らずに球根に付いていたヒガンバナ,右が茎を切って庭に転がしていたヒガンバナ。
 切ったヒガンバナの花びらやしべはゴミ袋から引き上げたときに,気まぐれで採ってしまっている。さて,比較してみよう。同じように黄色っぽくなってはいるが,心ばかり違うような気がする。畑で切られていないヒガンバナは黄色を越して茶色っぽいところがあり,萎びかかっているようだ。・・・の気がする。
 断定できるほど一目瞭然と言うわけにはいかなかったが,なんとなく手がかりを掴んだ気になっているので,これは来年きちっと試してみようと思う。


ヒガンバナの生命力はスゴイぞ!

 もう一つの不思議に思っていたことがある。あれほどまでに土手に勢揃いしたり,お墓を取り囲んでいたり,思わぬところに生えていたりするのはどうしてだろう。

これもまた「ひがんばな」の本の18ー19ページ。
「きゅうこんは おおみずにおしながされても にんげんにほりすてられても じりじりと つちのなかに ねっこを おろします。ながくのびたねっこは きゅうこんを つちのなかへ ひっぱりこみます。」
・・・え? 引っぱり込む? なんてスゴイ執念だ!
 捨てられても流されても,イノシシに掘り返されてもタヌキに蹴られても,土手や畑脇や山道にたどり着いたら根っこの引っ張る力で確実に潜って,そしてどんどん分球して仲間を増やしてゆく。しかも,それに加えて球根にはなんと毒まであるらしい。なめるとピリッとする。うーん,病気にも強いし虫にもやられないってオマケ付き! 
 ヒガンバナは古来から日本にあったわけではない。が,これほどまでに増えに増え,秋の風物詩として根付いたのも,なるほど,うなずける。
 恐るべし,ヒガンバナ! 向かうところ敵なしか。
 もし敵があるとすれば・・・宅地造成,道路の舗装化に伴う土壌消滅・・・ぐらいかもしれない。

 とかなんとか,色々やっているうちに,本家本元の”怪しい種もどき”は,雨に降られ日に照らされ,ナメクジも這ったネバネバ痕が出来ている。ご優待は”水に浸けてラベル付き”という点だけ。ハッと気づけば”ゴミ同然”。
 そうだ,お引っ越しをしよう。
 怪しげな標本が積まれ誰も近づかぬ,小橋家の秘境”ベランダ”へお引っ越しだ。

          ★ ヒガンバナ
         Bエピローグ ヒガンバナの種はどうなった?
        
                                      続きをどうぞ

 
                          トップページに戻る