またまたはやにえその行方 (第1話の続編
  

 平成10年12月26日,第1話のすぐ後のこと 
「母さん,今手が放せる?」 
 休日というのに生き生きとした主人の声,勝手口から顔がのぞく。 
「いいよ,何?」 
 本当は昼食にラーメンをと,タイマー片手に手を離したくない場面だが,何だか面白そうな気配。 
「はやにえ,またあるよ,知っとった?」 
え?知らなかった,待ってました。 
「なになに?」 
「まあ,見に来てご覧」 
 ああ,じれったい。もう,ラーメンなんてどうだっていい。つっかけを引っかけ現場に急行。ハサミムシ,カマキリの腹部に続く3番目の被害者はなんだろう。いろんなグロテスクな姿が次々と頭の中を駆けめぐる。 
「こんな所に良くもまあ刺せたなあ」 
「こんな所の物がよくわかったねえ」 
 わが家の鬼門に位置するサンショ。棘があるので鬼門にはよさそうだと聞いて縁起を担ぐ方ではないが4年前に苗を植えたばかり。木高も胸ぐらい,まだまだひよっこのか細い木である。その低い目立たぬサンショの棘にぶっすりと突き刺さっていたのは,ご存じ「はやにえ」の王道,アマガエルだった。 
「こんなに枝が,細いのにどうやってモズが留まったのかな? 棘痛そうだし,しなりそうよ。」 
「いつからあったんじゃろ?」 
「ミイラ状態ね」 
 何だかひからびきっている。アマガエルがいるのはせいぜい初冬まで,暖冬とはいえ11月中には冬眠しているはず。ということは,発見こそ遅かったものの登場時期は秋,「はやにえ」第1号繰り上がりは確実だろう。 
 このアマガエルのミイラ,その後ちょくちょく観察していると,雨の日にはふやけ,晴れるとひからび,そして寒い朝などは凍っていたりする。雪が積もっていたことだってある。まさに自然のなすがまま,「七変化はやにえ」だ。 

 このアマガエルの「はやにえ」発見場所は庭の中でもシメジメしているばかりでなく,アジサイやナンテンも植わっているアマガエル人気一番の上等地。梅雨の頃はよくゲッゲッゲッが響いていた。 
 その居住場所に隣接したサンショの棘に刺さってることを考えると,モズはアマガエルをかすめ取ってすぐサンショに留まり,突き立てたのではと思われる。 
 先述のハサミムシだって,モミジの下あたりの庭の枯れ草や石の下でウロついていたのを見たことあるし,オオカマキリなんて正に身を捧げてドウゾとばかりに「はやにえ」となった木の目と鼻の先にいたのだ。
 

 このことから察するに,来秋も我が庭に「はやにえの木」を登場させるにはエサが豊富な環境づくりも重要なのかも知れない。獲物のムシやトカゲ,カエル等にとって居心地のよい庭−つまり雑草生い茂る自然に近い庭,いいかえれば草抜きもせずノホホンと水でも撒くだけでいい,ほったらかしの庭・・・。おお,これはなんて素敵なこと! が,ちょっと見栄えに問題がありそうだ。きっと主人や義母はセッセと大事な雑草抜きに精を出すのは目に見えている。 

 話によると上野動物園のモズ舎では「はやにえ」観察用のエサを置いているという。生で「はやにえ」作りが観察できる企画だ。一体何がエサでどうやって刺すのか,そしてその「はやにえ」の運命はどうなるのか,知りたいことだらけ,もし上野動物園が近くにあったらモズの迷惑も考えず,お弁当もって日長一日,モズ舎の前で今か今かとねばることだろう。 

「今年になって,はやにえ全然出来ないねえ」 
「エサがないから当たり前じゃろう」 
 モズ達は寒く虫も目に付かなくなったこの冬の間,何を食べているのだろう。 
秋に高鳴きをして,一羽づつ縄張りを持つのは,花より団子,色気より食い気,冬に備えて少ないエサ確保のためだろうか? 

 モズは小さな猛禽類といわれるように,昆虫,両生類,は虫類,などをエサとする。そればかりでなく小鳥やネズミなんかも襲ったり「はやにえ」になったりする。嘴の先は尖って鍵状に曲がり,目の周りには黒い線があるので目つきだって悪そうだ。しかもビックリするほどヂュンヂュンと大きな声で脅しをかけて縄バリを主張する。見晴らしのいい木の上や電線で獲物を探すべくにらみを利かせ,しっぽを振り回し落ちつきもない。いかにも不良そうなモズではあるがやっぱり一目置いて,ついつい応援してしまう。 

 さて,その犠牲となった生き物達の行方が気になるところ・・・。 
 いかにも美味しそうで栄養豊富そうなカマキリの腹は12日9日に,殻っぽくて喉越しの悪そうなハサミムシは1月30日に,干物みたいに固そうなアマガエルは2月8日に,それぞれ全てが順々に消えてしまった。いずれの「はやにえ」もしっかりと枝や棘に突き刺さっていて,北風がひどく吹き荒れても飛びそうにないほどこびりついていた。人為的,いや鳥為的にとられたらしい。誰が犯人か?ヒヨドリ,スズメ,メジロ,モズ,ツグミ・・・etc.。家の庭に遊びに来る中に犯人はいるとにらむ。 
「ほんとは,アナタ,食べたんでしょ?」 
隣の畑の木で尾を振るモズに視線を送る。 
「うわっ,気持ち悪い」 
と,ゲテモノ嫌いな義母が無理矢理むしり取った可能性も捨てきれない。 

 さて,2月15日,急に春めいてうららかな日差しの中,わが家のモミジに見慣れぬ鳥が留まっている。新顔だ。あわてて双眼鏡でのぞく。??? これは・・・いささか黒い模様の少ないメスのモズだ! 恋の季節到来! 彼の縄張りに彼女が入ってきた。押し掛け女房らしい。団子より花,食い気より色気,あれほど一羽でバリバリ威張っていた彼も10メートルほど離れて電線に留まったメスにちょっかい出したりしている。 
 これは楽しみなことになってきたぞ。 
 馬に蹴られぬ程度に今後の行方をのぞき見していくとしましょうか。 
 

 
                          
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