フ ン は 語 る (後編)

(平成14年 4月12日UP)

そして2日後の溜めフン

 気になる。 どうしても気になる。
 あの溜めフンの中に,種以外の物があるんじゃないかな,消化不良になる変な物は拾って食べてないだろうか。
 うーん,溜めフンが呼んでいる様な気がする。居ても立ってもいられず,一日オフの日を見繕って再び出かけた。
 溜めフンとの対面も2度目なら,さらに一歩進んでフン解析をしてみようじゃないか。今回はマイ割り箸持参,水で溶く作業をするをするための紙コップ,ほぐした内容物を漉すための排水溝ネット,フンで汚れた道具を持って帰るのに厳重密封のためのナイロン袋等々,必須アイテムも袋に詰めて用意万端だ。

 さて,見慣れたサザンカの絨毯をフワリと踏みしめて一目散,溜めフンの場所に行ってみる。
この間,大事なタヌキのトイレをいじくったので,タヌキが嫌がって来なくなっていたらどうしよう。ドキドキしながら近づいてみると,心配ご無用,さらにフンの山は高くなっていた! さすが獣ヘンに里とかいて狸(タヌキ),人の匂いが怖くて暮らしてられるかという感じである。
 ではさっそく拝見ー。
 んっと息を止めて…ぐっと近づいて…目を凝らして…獣目線で近づくいてみて驚いた。白いものがニョキニョキ生えている! まるでモヤシ。季節は移り変わり,タヌキの溜フンにも春が来ているのだなぁ。植物の種散布大作戦は大成功。生き物のつながりってとてもうまくできているなぁと,妙に感心してしまう。
 でもまてよ…この様子だと一昨日もあったはず。ただ「こんなものかな〜」とぼーんやり眺めていた一昨日の目は節穴だった。
 見つけものというものは「見てみよう」という心がけ次第で,何倍にも面白いものが見つかるものなのだ。

 しばらくその「見てみよう」視線で,棒を使ってゴソゴソしていたが,解るものといえばやはり銀杏の種とセンダンの実ばかり。あとは固そうな物体の一まとまりという感じがする。というわけで,必須アイテム,フン解析セットの出番がきたようだ。
 どれにしようかな・・・よりどりみどり,どのフンでも良いのだが,出来るだけ怪しそうな物が詰まっていそうなフンを選ぶ。なにやら宝探しの雰囲気。選ぶのも真剣そのものである。おめがねにかなった4塊のフンを,用意していた紙コップに入れて祖母の家の庭に持って帰る。そして水でほぐしてみるのだ。
 以前謎の毛だらけフンは随分難航したので覚悟をしていたが,水攻めの前に固いフンもあっけなく総崩れ,よしよし,この調子。水を丹念に換えていこう。

 佳境に入ったところで,突然セールスマンに声を掛けられたり,隣人の方がベランダから見られている気配を感じたりするものだから,なかなかスリルがあってドキドキする。まさかフンコップを持っているなんて思いもしないのにギクッとしてしまう。まったくフン愛好家の肩身というのは狭いものである。
 
糞というものはくさい。だけれど,溶かしているとその糞臭い匂いとは違う独特の匂いがする。何のこれしきと思うものの,臭いものに蓋というわけいかないのでぐっと異臭をこらえる。こんなとき鼻が利く体質は困りものだ。

フンの中身は?

 幾度か水を換えつつほぐしているとー内容物が出てくる出てくる。目で見て解らなかったものがゾクゾク露出してきた。

溜めフンの中身,これなんだ?
(こばし予想)

1.干しダイコン
2.キュウリの漬け物
3.草(胃腸調整用)
4.コガネムシの幼虫
5.センダンの実
6.柿の種
7.何かの種?
8.ヤブランの種
9.銀杏の種
10.昆布
11.リンゴの皮
12.柿の実
13.何かの種
14.えのき茸
15.カニの殻

 銀杏にセンダンにヤブランの実,この冬はそんな実を食べているんだなぁ。
それにダイコンって・・・いやにシワっぽいと思ったら,これって干しダイコン? 
キュウリだって切り方といい状態といい漬け物っぽい質感がする。こんなもの食べて塩分大丈夫かな?
 蟹の殻なんて,良いもの食べている。昆布は出し昆布サイズのようだ。それにエノキ茸まで出てくれば,このお宅の夕食は「かにすき」かな? 
恐るべし溜めフン,どこかの家庭の夕食のメニューまでみえてくる。

 ふと気が付いたのだが,溜めフン解析で聞いた物の中には必ずと言っていいほど問題視されている人工物がこの中にはない。水でといたもの以外のフンの山をいじっても,出てこなかったのを思い出す。
 ここは農村地帯。道端にはゴミひとつなく,店もなしポイ捨てもなし,あるのは田圃に畑に民家だけ。冬の田圃の風景というものは,刈り取り後に野菜の皮とか残飯をぽいっと捨ていてることある。春までには自然に肥料になるのだ。それをしめしめと失敬して食べているのかな。
 人工物が今回見つからなかったというのは,土に帰らないごみは田圃やその辺りに捨てないという,農村の生活なのかもしれない。
実家の田んぼ点々と続くタヌキの足跡

 たった糞からその動物が見えてくることもあれば,その住んでいる環境が見えてくる。
 冬には冬の,春には春の,夏には夏の,秋には秋の,それぞれのフンの内容物には自然や人の生活の季節感が満載なのだ!
ますます奥深いフンの世界である。
だからフンって面白い! 

…と,そう思う私である。 (おまけへ続く)

「フンは語る」〜おまけ編〜

春の溜めフンへ



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