草の根ハシラ

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9.24.tue 

 仕事の合間の昼休み、男は屋上に出てみた。会社のビルは5階建てだから、屋上はつまり地上6階の高さになる。
 とても天気がよかった。空は青く、高く澄みわたり、雲がところどころにぽっかりと浮かんでいる。風がネクタイをゆるやかにはためかせるほどに吹き、空の雲もまたゆっくりと動いていた。顔を上げると、頭上にはほとんど雲がなかった。
 会社のビルは街のはずれにあった。周囲にビルと呼べる建物がほとんどまったくない、郊外の住宅地の、そのまたはずれにあるため、屋上からは周囲の景色がぐるりと見渡せる。密集した住宅地のそのむこうに、街の中心部があった。地方都市なりの高さのビルがいくつか見える。そのさらに向こうには、平野を取り囲む山並みが横たわっている。街の中心部と、その遥か向こうの山並み。たいして高くもない山のはずだが、その山並みの稜線より高く見えるビルは2つしかなかった。
 どこかで運動会をやっているのだろう。アナウンスの声が風に乗ってふわふわと耳元をよぎっていく。それ以外に聞こえるのは、屋上に設置された室外機が時おり思い出したように作動する音、やや南を走るバイパスを流れる車の音、どこかで鳴いている鳥のキチチチ……という声、そして風の音。
 男はときどき、こうして屋上に上がることがあった。屋上に立ち入ることはとくに禁止されていないはずだったが、これまで誰かと鉢合わせしたことはほとんどなかった。入口に鍵がかかっているわけでもない。禁止ではない、でもできれば立ち入らないほうがいい、ぐらいの取り決めなのだと、男は勝手に解釈していた。
 男は煙草を取り出して、火を点けた。それほど吹いてないと思っていた風が、思いがけずライターの火をかき消すほど強いのだということに、男は気がついた。
 屋上の真ん中に立ち、煙草をくゆらせながら、男はその場でしばらく立ち尽くした。とりとめのない思い、とりとめのない顔が次々と浮かんできた。そのひとつひとつについて思いを馳せようとしてみたが、空を眺めているとなかなか思考が定まらず、思いも、顔も、浮かんだはしから空へ吸い込まれるように消え去っていった。心が研ぎ澄まされるというよりも、心がなにかに溶け出していくような、おだやかな気分だった。
 時計を見る。もうすぐ午後の始業だ。煙草を1本吸っただけなのに、もっと長い時間、そこに立っていたような気がした。
 このままどこかへ走りだしていきたい。そんな思いを胸の奥にしまいこんで、男は非常階段を階下へむかった。こういうのは束の間の時間だからいいのかもしれない、と思った。


9.21.sat 

 今宵は中秋の名月。何年ぶりだろうか、久しぶりにミジェットで月見に出かけてみた。
 街の光から逃げるように山あいへと走り、ひとけのない駐車場にミジェットを止めて見上げると、高く澄んだ秋の空にまあるい月が昇っていた。

 じつは中秋の名月は必ずしも満月ではないらしい。月齢と旧暦の微妙な差のため、年によっては完全な満月ではないタイミングで中秋の名月(十五夜)がやってくることもあるとか。さらに厳密にいえば、同じ一日の間でも月は傍目にはわからないほど少しずつ満ちたり欠けたりしているので(地球も月も常に自転公転してるしね)、100%完璧な満月を見ることができるのはほんのわずかな瞬間なのだという。
 というわけで十五夜にパーフェクトな満月を愛でるのは、じつはタイミングがけっこう危ういらしいのだ。しかもこれに天気という要素が加わってくる。せっかくの名月も、雲が出ていては拝めない。調べてみると、統計的に十五夜は雲が出ていることが多い。秋雨前線の活動時期とちょうど重なるので、雨や曇りの夜がけっこうあるんだという。

 さて、こういったマメ知識を踏まえつつ今年の十五夜はどうだったかというと、これが正真正銘の満月。午後10時53分にきっかり満月になるというタイミングだった。そしてこの瞬間、まさしくぼくは夜空の月を見上げていた。例年通りというか、やはり雲は少し多かったけど、完全な満月を迎える頃にはすっきりと晴れ渡り、南の空高くにきっかりまるい月が昇りつめていた。
 地球から月までの距離、38万km。そうすると、いま見上げている月は1.3秒ぐらい過去の月なんだなあ。ぼくが生まれた年、1969年にアポロ11号はあそこへ行ったんだっけ。たしか着陸地点は静かの海……。
 星もかすむほど白く輝く満月。その光の余波で空もまた明るい。ポツポツと浮かぶ雲がくっきりと照らし出され、それはまるで群青色のフィルター越しに見る青空のようだった。
 明かりのない駐車場全体が、青白くほのかに照らし出されている。幌を開けたコクピットもまた、月の光に浮かび上がっていた。ひそやかに聞こえる虫の音に時おり耳を傾けながら、煙草をゆるかにふかしてみる。団子とお茶でも持ってくればよかったな、と少しばかり悔やんだものの、シートに深く身を埋めて見上げる月に、なんだか心まで浄化されるようだった。

 この日を境に月の出は少しずつ遅くなりはじめる。昔の人は十五夜のあとも名残を惜しむように月を眺めつづけたらしく、翌日から順に「十六夜(いざよい)」「立待月(たちまちづき)」「居待月(いまちづき)」「臥待月(ふしまちづき)」「更待月(ふけまちづき)」と名前をつけた。立って待ち、座って待ち、寝ころんで待ち、夜が更けるまで待ち……。そして旧暦9月13日の月を「後の名月」と呼んで、天空の満月にまた思いを寄せたのだという。
 中秋の名月にくらべてちょっとマイナーな「後の名月」。なんでもこの日に月を眺めると縁起がいいとか。統計的にも晴れの日が多いらしい。この日にまた行ってみようかな、月見のドライブにミジェットと。


9.13.fri 

 その日一日中、どういうわけか脳裏で流れつづける歌ってないですか? ふとした瞬間に、なんの脈絡もなく頭の中で歌詞とメロディーが流れはじめ、それが一日中、折りにふれて繰り返される、というやつです。ぼくはこれがたまにある。
 その歌はある時に突然スイッチが入ったかのように頭の中で演奏がはじまる。なぜそんなことになってしまうのかは謎なのだが、さらに謎なのは、その歌が「なんでこの歌?」と首をひねるほど脈絡がないこと。その日の行動や前日の体験、好き嫌いといったぼくの意識的な働きにまったく関係がなく、いったいどういう理由でその歌が選ばれたのか、まったく見当もつかないのだ。
 ある日はパソコンで書類を作成している最中に「ラブユー東京」が。
 ある日は歯を磨いている最中に「国方防虫」のCMソングが。
 ある日は会議の最中に「モーニング娘」の題名も知らない歌が。
 不思議なことに、こうした「脳裏で突如流れはじめる歌」の中には好きな歌がちっとも入っていない。これはかなり不条理だ。浜田省吾とか山下達郎とか大滝詠一とか、ぼくの好きなアーティストや好きな歌は待てど暮らせど流れてこず、「ラブユーラブユー涙〜のト〜キョ〜」とか「白アリ出たぞ、羽根アリ出たぞ」とかいった、好みとも時代ともまったくリンクしない歌ばっかりが流れてくるのだ。
 「ラブユー東京」とか「国方防虫」は、それでもまだ問題はない。どっちでもいい歌なので、まあ聞き流そうと思えば聞き流せる。しかしモーニング娘は困る。正直あまり好きではないから(あえていうなら嫌い)、「好・き・な・人が〜や・さ・し・かった〜(ヒュー)」とかいう歌が勝手に頭の中で流れるのは、はっきり言って迷惑である。「ええっと、この企画はこうだから、あれを考慮して……」などとそれなりに物事を真剣に考えているのに、頭の中では「ひなまちゅりー」とか流れてるのである。「よりによってなんでこの歌!?」と選曲のまずさを呪ってしまうのだけど、だれにも文句はいえない。選曲はたぶん自分でやってるんだろうから……。
 無意識におこなわれてはいるものの、さすがに歌の再生能力には限界があって、知らない歌は流れないし、知ってる部分しか流れない。したがって、たとえば「ひなまちゅりー」ならまさしくその部分しか知らないため、ただひたすら「ひなまちゅりー」のエンドレス再生。拷問である。

 ちなみに今日は「ザンボット3」の主題歌だった。たぶん10歳ぐらいの頃にテレビで観てたロボットアニメだ。そのロボットの形も主人公の名前も覚えてないし、ここ最近ザンボット3関連のものを観たり聞いたりした覚えもない。なのに、ある瞬間に突然「愛と勇気と力とが静かに眠る海の底〜」とイントロもなしにはじまった。
「飛び立て飛び立て飛び立て〜3つのメカがひとつになって〜」
 上司に提出する書類を作りながら、頭の中ではひたすらザンボット3が繰り返し再生。ここで「じゃあ久しぶりにザンボット3でも観てみるか」とレンタルビデオ店にでも立ち寄れば、そういえばこんな番組夢中で観てたよなんて少年の日の思い出にひたるサラリーマン32歳の秋……などという新たな展開も期待できそうなものだが、いくら主題歌をリピートされても観る気は全然起きない。なんせぼくの欲求とか好みとかとまったく無縁の歌ばかりだからね、流れるの。たぶん朝になればきれいさっぱり忘れていて、何日かすればまたまったく脈絡のない歌(例を挙げようと思ったけど、想像もつかない)が頭の中で流れはじめるんだろう、きっと。

 この「突如頭の中で流れはじめ、それが一日中続く現象」の理由とか選曲の基準、誰か解明してくれないかなあ。せーいーぎーの姿きょだーいロボットー(←頭の中はこう)。


9.10.tue 

 ついてない一日。

 朝からどうにも眼が痛くって、鏡を見たら右目が真っ赤! あわてて駆け込んだ病院で「角膜感染症です」と宣告されてしまった。
「そそそそそれはどどどどんな病気なんですか」
 ああ、さよなら青い空白い雲……。
 しかし心配とは裏腹に「角膜に傷がついて、そこにバイ菌が入ってしまってるだけ」と先生は落ち着き払っている。
 か、角膜に傷って……。
「角膜に傷がつくのはよくあることですよ。普通は身体がすぐ自然治癒してくれるんですが、ちょっと身体の抵抗力が弱ってるんですかね、今回は対抗しきれなかった、ということです」
 そ、そうなんですか。いまいち不安が拭えないまま抗生物質の目薬(こんなのあるんだね)と錠剤、そして痛み止めの頓服薬をもらう。ん? 痛み止め?
「抗生物質が効きすぎて痛むかもしれませんので。どうにも我慢できなくなったら飲んでください」
 そ、そうですか……。い、痛むんですね、抗生物質って……。
「あ、それからコンタクト、治るまで装着しないでくださいね」
 え! あの、眼鏡ないんスけど……。
「んー、でもコンタクトはやっぱりダメです。なんとかなりませんか?」
 ううう、なんとかします……。

 ひとまず会社に帰ってひと仕事。
 うーむ……、痛いぜ眼が……。
 そうだ、こういう時こそさっそく目薬を。



 い、痛い!
 め、眼があかん!
 ほ、ほんとに痛かったのね抗生物質!


 痛さのあまり常時ウィンク態勢でそそくさと退社し、さっそく眼鏡屋へ直行。
 「メガネ一式3,500円から!」と躍るコピーにそそられて入ったものの、検眼の結果「度が進んでいるので無料レンズでは対応できませんねー」と冷たくあしらわれる。
 い、いちばん安くていちばん早くできるの……ください。
「ではフレームをお選びください」
 あ、はい。えーっと、えーっと……。
「どのようなフレームをお探しですか?」
 いやその、2時間ぐらい前まで眼鏡買おうなんてこれっぽっちも考えてなかったわけで……。ど、どれがいいんだろう……? ど、どんなのがいいんスかね? えへ、えへへ……。コホン。えーっと、お、これちょっとかっこいいかも……って2万9,000円! ニマンキューシェンエン! ちくしょー、あーすげー迷うし……。しかしなんで最近はこんな“ざーます”おばばチックな眼鏡ばっかなんだ!? やや、こっちの3,500円じゃん……って重い! しかもフレーム赤! 俺はトニー谷か!? 
 右目を真っ赤に充血させた、たったひとりの客であるぼくは、店員の気配を背後約1.2mに感じつつジリジリとした焦燥のなか頭から湯気を出しながら眼鏡のフレームをひたすら睨みつづけた。
「あー、もうこれ! これでいいッス!」
 試しにかけて違和感がなさそうな(気がした)やつに決定!
「ありがとうございます。レンズセットで2万9,400円になります」
 くそー、なんかあとからすげー後悔しそうな買い物……。


 プルルルル。
 お、カミさんから携帯に電話が。ちょうどいいや、このくやしさを聞いてもらうぜ!
 もしもし。
「もしもし。…………。あれ? もしもし? あれ? もしもし?」
 ん? いやその、もしもし? おーい、もしもし?
「もしもし? あれー? もしもし? …………。うーん」
 ブチッ。

 ん? なんだちくしょー? 電話がダメならメールだ!
 め、が、い、た、い、さ、い、ふ、も、い、た、い……送信!




 め、メールも送れねえ……。

 け、携帯電話、壊れた……。

 あ、あしたJ-PHONEショップ直行、決定……。


9.9.mon 

 先週の土曜日、帰宅すると工場から「お電話ください」のメッセージが。またまたイヤな予感をおぼえつつ日曜日に電話するが、誰も出ない。工場へ直行してもシャッターが閉まったまま。この日は朝からツーリングへ出かける予定だったので、ひとまず北へむかって走り出す。途中、休憩ごとに電話を入れるが、やっぱり誰も出ない。夕方近く、帰宅前に工場へ立ち寄ると、たまたま工場長もやってきた。その開口一番、
「ミジェット、仕上がりましたよ」
 むひょー! やっと退院だ!
 前回のモノローグで書いたように、ミジェットの症状はけっこう重い。今回は様子見の意味もあっての仮処置に近いものだから「完治」ではない。だから不安を抱えながらの退院なのだけど、それでもとりあえずミジェットは元気になった。6月にグズりはじめて以来だから、3カ月ぶりに復調したことになる。ふー、長かった……。
 さっそく夜のドライブへ連れ出す。夕方に激しいスコールが降ったあとだけに、空気が澄んでいて風も心地よく、幌を開けて走るには絶好のコンディション。200kmのツーリングを終えた直後だからさすがに身体はだるかったけど、グズることなく軽快に回るOHVの音色と振動に身をゆだねていると、なんだか心の底からリラックス……。ミジェットはマイナスイオン並みに癒しの効果があるのだ。

 で、その日曜のツーリングは前述したように北のほうを走ってきたのだけど、その道すがらコペンを2回も路上で目撃した。北の町は納車が早いんだろうか? 初めて見る「走行中のコペン」は、思っていたよりかなりキュートな姿。1台は若い男、もう1台は若い女性が乗るそのコペンたちは、しかし残念ながらどっちもクローズ状態。せっかくの秋晴れなのに、ちょっともったいない。この日はほかにオープンカーを何台も見かけたけど、幌を開けて走ってたのは、おっちゃん操るビート1台だけ。うーむ、若い連中はなっとらんぞ!
追記:コペンに男はやっぱり似合わない。

 長らく更新が止まっている「エンスー日記」。決して執筆をサボッてるわけではなく、空いた時間にコツコツと書いてはいたのですが、次のvol.10を8割ほど書き終えたところで「ダメだこりゃ」と唐突に悟ってしまい、そのテキストファイルは“ボツフォルダ”へ直行……。いま新しく書き直しているところです。というわけでvol.10の公開はもうちょい先になりそうです。ごめんなさい。


9.5.thu 

 初夏の頃から続くミジェットの不調。ただいま復活へむけて着々と作業が進んでいる……はずが、工場から「ちょっとご相談が」の連絡。こういう切り出しはほぼ100%悪い知らせなのだけど、これがやっぱりその通り。
 ミジェットは重症だった……。
 不調を引き起こしている直接の原因は、予想通りガスケットだった。シリンダーヘッドを開けてみたら、案の定1番のガスケットが近接するウォータージャケットへむけて見事に抜けていたのだ。
 これだけならいい。原因がわかったんだし、ガスケットを交換すればいい話だ。ところが話はさらに続く。
「なぜガスケットが抜けてしまったのか?」
 その原因というのが重症なのだ。
「シリンダー内壁に入れてあるスリーブの上端がシリンダーブロックの上面と面イチになっておらず、コンマmm単位で下にズレている。そのためシリンダー周辺のガスケットが完全に密着せず、圧縮に対して強度が確保できてない。よってガスケットを交換しても、またしばらくすると同じ症状が起きる可能性大」
 これが工場長の所見。ガスケットを見ると、明らかに抜けてしまっている1番以外の2番、3番、そして4番までも微妙に圧縮抜けしている跡が確認できる。つまり全気筒が圧縮抜けしていたのだ。
 工場長の言葉を借りれば「普通はこんなことになるはずないし、なぜこんなことになってしまっているのかわからない」ということ。さらに「これを根本的に直すには、エンジンを下ろしてバラさないといけない」らしいのだ。
 うーん、バタッ……。
 さらに追い打ちをかけるように工場長は告げる。
「見てください、シリンダーの内壁」
 なんとそこには無数の傷が……。
「原因はなんともいえませんが、おそらくピストンの材質があんまりよくなくて膨張率が均一でないため、こんな傷がついてしまうのでは」
 もちろん傷を直すには、エンジンをバラしてボーリングしなければいけない。必要ならピストンも総入れ替えだ。

 はっきり言って、そこまでできるゼニーがない。だから「どうしましょうか」という工場長の問いかけに返す言葉がしばし見つからなかった。
 ゼニーがないのは明らかな事実(その工場はいつもニコニコ現金払い)。よっていくら考えても答えは限られているわけで、結局のところ「ひとまずガスケットだけ交換してください」と答えた。もともと貧弱な純正ガスケットに代わって強化タイプのものを組み、それで様子をみるしかない。
 症状がいつ再発するのか、それは工場長にもわからない。もちろんぼくにもわからない。
 爆弾を抱えながらの不安な復活へむけて、ひとまず道は決まった。
「これでしばらく乗って様子をみて、その間にお金を貯めよう」
 むーん、ちくしょー絶対に見捨てないぞミジェット!


9.3.tue 

 うちの近所には小学校がある。9月になって夏休みが終わり、子どもたちの通学姿がまた朝の風景に戻ってきた。ところで通学途中の子どもたちを交通事故から守ろうと、父兄の人たちが黄色い旗をもって道ばたに立っていること、ありますよね。
 家のすぐそばにある交差点(信号なし)にも父兄が一人立っていて、時おりやってくる車の動向に目を光らせているのだけど、その人は70歳はとうに越えていると思われるおじいさん。どの車にもそうやるのだろう、ぼくがその交差点にさしかかると、子どもたちに危険がないと判断するや「さー、いまなら行って大丈夫!」とばかりにこちらへ向かって一生懸命に旗を振り、「そのまま進め」と合図をくれる。
 微笑ましい光景だ。
 しかし。
 おじいさん、そこは『一旦停止』なんだ……。
 しかも「行っていいよ」といいつつ、それと同時に車が横から来てたりするんだ、たまに……。

 ありがたいその気持ちだけ受け取って、パタパタじいさんの前でいつも一旦停止して安全確認をするぼく。なんだかすまない気分。




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