3日目
03年4月17日(木) 晴

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  ふじや 旅館 〜 12番 焼山寺宿坊


20人程いた宿泊客のほとんどは5〜6時に出発した、同室の松原さんも6時に発った12番焼山寺の更に先、神山温泉まで行くためだ。
7時出発の石津さんと私が発つときは福岡の武永さんともう一人相部屋の女性だけであった、彼女たちは8時出発だという。

藤井寺の境内を通り抜けるとすぐに急な上り坂やら不規則な石段が続く、いよいよ全長12.3kmの激坂へんろ転がしに挑戦だ。
急な坂道を杖をつきながら一歩ずつ登ってる、特に急な所では杖を両手で握り舟に竿さすようにして体重移動する。
舟なら一回でもっと進むのになあ・・・と思ったりしながら。

やがて道は緩やかになった、遙か下界は昨日歩いた辺りの大パノラマ、素晴らしい。

長戸庵・左端外人へんろ 私、石津さん 柳水庵 一本杉庵

石津さんは今春定年を迎えた、引き続き勤めて欲しいとの話があったが辞退して趣味の「竹とんぼ作り」と「四国へんろ」それに「良寛さんの足跡」などを訪ねる事にした。

2〜3ケ月なら待つとも云ってくれたが・・・。
「焚くほどは 風がもて来る 落ち葉かな」
良寛和尚はどうにか日々食べるだけなら・・・

長岡藩主の誘いをやんわりと辞退した。
わたしも焚くだけならなんとか・・・。

永平寺の坂井老師が千日回峰をすると聞いて自分は千本の竹とんぼ作りを誓った。5年寝かせた竹を土日に加工、月〜金3〜4時に起きて出勤までの間に製作(1日2本=1週10本のペース)二年目ついに1000本作った、このような私を「とうとうみ」の三奇人の一人だと云う人もいます・・・。

初心貫徹できる人はうらやましい。
私は逆だ、だから馬が合うのか、以後一緒に歩くことになった。
昨日竹とんぼを貰った凄く良く飛ぶシュッ!と手から放しただけで10mはかるく舞い上がる、驚いた素晴らしい。

おぬし只者ではないナ! 
 「とうとうみ」の右 甚五郎!と云ってください・・・ははは。

一本杉 一本杉庵にて へんろ道 焼山寺


歩く内に昨日の外人へんろを追い越したりまた追い越されたりしながら何度も上ったり下ったりした。
確かにしんどいしかし気分は快適だ、車の多い道の方がよほどストレスがたまる。
昔は山道が難所だった、車社会の今は国道が難所で車の入れない山道は癒しの道に変わっていた。

出発から6.4km柳水庵で7〜8人のへんろがリュックを降ろし休憩中昨夜食事の時一緒だった熊本のへんろ三人も・・・。顔見知りもそうでない人も皆同じへんろすぐに親しくなる。

柳水庵は庵主が病気のため閉まっていた、空いていればぜひ泊めて頂きたい庵だ。
更に2.1km歩いて一本杉庵、弘法大師お手植えの杉の大木を背にした大師像が迎えてくれるここでまた暫く休憩。

一人歩けるだけの細い道を右に曲がり左に折れ上ったり下ったりする内に焼山寺の鐘の音がかすかに聞えたように思えた、じっと耳を澄ます、しかしもう聞こえて来ない、気のせいだったか 
焼山寺はまだ大分先らしい。

天気もいい 気分もいい グリーンシャワーの中をただ無心に焼山寺へ向う。
「鐘が鳴りましたか・・・私には聞こえませんでした・・・」と石津さん・・・そして

「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり。
沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。
奢れる人も久しからず。唯春の夜の夢の如し。
猛き者も遂には滅びぬ。ひとへに風の前の塵に同じ。」

「むなしいですなあこの世は 如何に努力し志を果たしてもそれが永遠に続くと言うことは無いのですから・・・来世には永遠があるのでしょうか」

あります 二度目の誕生から始まるのです。 
二度目の誕生?!ですか

ええ、二度目です・・・終着駅は始発駅・・・ここから始まります

来世はネ それぞれの人が俗世で一番輝いていた頃・・・その辺りでストップして永遠に続くのです。
どの辺りにします?

まだあげ初(そ)めし前髪の  リンゴのもとに 見えしとき
前にさしたる花櫛の  花ある君と思いけり

藤村ですね

やさしく白き手をのべて  リンゴをわれに あたへしは
薄紅(うすくれない)の秋の実に  人こい初(そ)めし はじめなり

いい時代ですなあ  
そう いい時代でした 

リンゴ畑の樹(こ)の下に  おのづならかる細道は
誰(た)が踏みそめし かたみぞと  問ひたまふこそ こひしけれ

「もし来世があったら また一緒になってくれるか、家内に尋ねた事があります」と石津さん
ほう・・・で 奥さんはなんと? 「特にいやとは云いませんでしたOKでしょう」
それはいい 私は はっきり断られました。

急な坂を下って谷に降り又長く急な坂を上る、六根清浄、六根清浄、柳水庵でペットに詰めた水もとっくになくなった。
だがすばらしい自然を満喫して2:50、遂に標高700m12番 焼山寺に着いた、何はともあれ自販機へ一直線ペット入りのスポーツドリンクを一気に飲みほした。

へんろ転がしはきついしかし癒しの道だった。

焼山寺の宿坊は1間(1.8m)廊下の両側に本間8畳の部屋が各4室づつ、2階にも部屋があるらしい。
広い、きれい、清潔、応対も良い食事も部屋まで運んでくれる民宿や旅館よりよほど良い、宿泊料も安い。
すばらしい一日だった。
             歩行距離   12.3km
             歩  数   19479歩

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 スポーツドリンク    150
焼山寺宿坊 6,850
本日計 7,000
累 計 28,775