1993年8月。
ミジェットと暮らしはじめて1ヶ月が過ぎようとしていた。
しかしエンスー日記7回目にしてまだ1ヶ月しかたってない、というのはどうなんだろう。
『知ってるつもり』にしろ『波瀾万丈』にしろ、ひとりの人間の一生を1時間かそこらで紹介しているのに、たかだか1台の中古車の、しかもたった1ヶ月ぐらいの出来事に6回分もかけてどーすんだオイ、とわれながら突っ込んでみたりするわけだが、まあそれだけいろいろあったということなのだ。
そういえばこんなこともあった。
ある夜、大雨が降った。
この年の夏はとにかく雨ばっかり降ってたもんだから、「あー、今夜はちいと激しいやねー」とたいして気にもとめず、探偵ナイトスクープ見てさっさと寝てしまった。
ところが次の日。
雨がやんだのをこれ幸いと、ミジェットに乗り込むべくドアを開けたところで「げげっ!」とのけぞった。
水たまりができていた。
ミジェットのフロアに、水たまりが出現していたのだ。
それも「あのね、ちょっと湿ってみたりしたのねジトジト……」などという控えめなものではなく、「ども! 水っス! たまってますタップンタップン!」と豊かな水量をたたえて波うつ、それはそれは見事な水たまりだ。
「どはーっ!! なんてこったーっ!!」
お出かけ前のルンルン気分は瞬く間に吹き飛び、ぼくは激しくあわてながら水を手で汲みだしていった。タップンタップンしてるだけに手のひらごときでそうそう消え去るものではなく、ワッセワッセと汲み出したところで処理ははかどらなかった。最後は雑巾を何枚も動員させて吸い込ませ、なんとかフロアに溜まった水を除去することに成功。
しかし車内がなんかこう、ジトーッと湿っぽい……。
結局その日は一日中ミジェットの虫干しをするはめになった。
幌を半開けにして(幌の内側も濡れてた)湿気を大気中にムンムンと解き放っていくミジェットを見守りながら、夕方までぼくは一歩も外に出ることができなかった。
雨漏りか……。
「それはオープンカーにとって、いわば宿命のような、ものだ」
と森本レオ調でつぶやいてみたりする。
この時代のオープンカーの幌なんて「付け足し」みたいなもんだから(ユーノス・ロードスターも新車時すでに雨漏りしてたが)、ミジェットと暮らしはじめた当初から少々の雨漏りは覚悟はしていた。
その覚悟を裏切ることなく、ミジェットはしっかり漏らしてくれた。
おもにフロントウィンドシールドと幌の隙間から、あるときはジワジワ、あるときはポトッポトッ、そしてまたあるときはボタボタッと盛大に雨が漏れてくるのである。雨の日にドライブしてると、ステアリングを握る腕にポタッ、シフトノブを握ると濡れててツルッ、なんていうことは日常の光景だ。
サイドウィンドウと幌の間からも雨は浸入してきた。
例えば助手席に新聞紙をさりげなく置いてみる。すると、次に目を向けたときには水を含んでシワシワに変わり果てていたりするのだ。
雨の日は助手席にタオルが欠かせないアイテムとなった。
これぐらいのことならまだ許せた。
「う〜ん、しょうがないなーモー!」などと額をツンツン小突きつつ、しかし次の瞬間にはまたミジェットとお手々つないで「アハハ……」とお花畑を駆けめぐることができたのである。
しかしさすがに、こうも豪快に水たまりができるとなると笑ってはいられない。
なにか対策を考えネバネバ……。
雨上がりの青空を仰ぎつつ、屋根付きのガレージがやっぱり欲しいなあ、とタメ息ひとつ落としてみるぼくだった。
1ヶ月。
それはひとつの節目だ。
男と女の場合もそうだが、1ヶ月も一緒に暮らしていれば、つきあいはじめた頃には気がつかなかった、あるいはたいして気にならなかった点がそろそろ目につくようになってくるものだ。
ミジェットに関していえば、前述の雨漏りもそのひとつ。
さらにいえば、もう1点、どうしても気になる箇所があった。
ステアリングである。
「キミ、ちょっとこのステアリング、なんとかならんのかね」
などと経理課長風に問いただしたくなったのである。
ステアリングのなにが気になったのか、それについて順を追って説明していこう。
ぼくのミジェットは1500だ。5マイルバンパーが装着され、スピットファイアと同型の1500ccエンジンが搭載された、正真正銘の1500である。しかしダッシュボード周りはなぜかMk-IV仕様である。
その理由は定かではないけど、ともかく通常の1500とは仕様が異なるのは確かであり、そして当然というかステアリングもまたMk-IVのものがしっかりと鎮座している。
デザイン的には1500純正のものよりMk-IVのステアリングのほうがカッコよいと考えていたぼくとしては、Mk-IVのステアリングがついていること自体はむしろ喜ぶべきことだった。わーいわーいと小躍りのひとつでも披露したいところである。
しかし、その大きさが問題だった。
ステアリングが大きすぎるのである。
ステアリングが大きすぎると、どんな弊害が起きるのか? わかりやすく図にしてみよう。
つまり運転席に腰をおろし、さっそうとミジェットを走らせるぼくの眼前に、ステアリングの“握るところ”があるのだ。
それはまさしく眼前であり、ぼくの視野のど真ん中をほぼ完璧に横切っていた。
普通に腰掛け、普通に背もたれに身体をあずけ、普通に前を向くぼくの視線のちょうど先を、ステアリングが「ちょっと失礼」と横断しているのである。
最初はぼくの姿勢が悪いのかと思った。背筋を伸ばしてちゃんと座ればなんの支障もないのではないかと考え、運転席に座ったときなど意識的に背筋を伸ばし気味にして座ってみたりもした。しかしやがて身体とシートは違和感のないポジションへと落ち着いていき、結局またステアリングが目の前を横切っている状態に収まってしまうのである。
これはミジェットを初めて運転した時点ですでに発覚していた事実だったが、「好きだよおまえアハハ……」な当初は「まあこれくらいのことは大目に」と、さほど気にしていなかった。
しかし。
ミジェットに乗るたびにステアリングが視野のど真ん中を「ちょっと失礼」といちいち横切っているのは、さすがにだんだん苦になってきた。
視野を横切っているわけだから、例えばちょっと前を走っている車が見えない。ちょうどステアリングに隠れてしまうのである。だから前方の視界を確保しようとすると、首を少し伸ばしてステアリングの向こうを見やるか、逆にやや屈み気味にしてステアリングとダッシュボードの隙間からこっそりと(いや堂々と見ればいいんだけど)うかがうしかない。
これはストレスのたまる作業であるし、なにより安全運転をするうえでもゆゆしき問題だ。
なんでこんなことになってしまうか。
考えられる原因はひとつ。
『シートがヘタッているから』
これである。長年の使用でシートがヘタッて沈み込んでいるため、運転する人の視点が少し下がってしまうのである、きっと。この推測を裏づけるように、運転席と助手席を比べると明らかに運転席のほうが沈み込んでいる。
だからもともと運転者の視点とステアリングの位置との関係はまっとうなものであり、その昔このミジェットに乗っていたサンディエゴ在住のキャサリンさん(推測)はちゃんと前が見えていたはずなのである。
しかしいまは見えない。
キャサリンさん(23歳ウェイトレス/推測)は見えていたかもしれないが、ぼくは見えないのだ。
これはなんとかせねばなるまいて!
本来ならこういう視界のはずが
↓
このようにステアリングで見事隠れてしまう
いちばん手っ取り早い解決策は座布団を敷くことだ。
ときたま路上で無人の車が走ってきてギョッとしつつも、じつは背が低い人が運転していただけ、ということがある。そういった方々はたいていこの座布団作戦で事態を解決しているものだ。
座布団を運転席に敷いて視点を少し高い位置へもっていけば、それでちゃんと前は見えるはずである。
きわめてシンプルかつ有効な手段だったが、思いついたはしからぼくはこの案をただちに却下した。
カッコ悪いからだ。
たとえば「スチャッ」という効果音とともにぼくが颯爽とミジェットから降り立ったとしよう。その際、ぼくの尻の下からキティちゃんの座布団が現れたらどうだろう。
目も当てられない。
キティちゃんだろうがクマのプーさんだろうが、座布団を敷くという行為にはやはり少々抵抗を覚えたのである。
できることなら、シートはシートのままであってほしいものだ。よけいなものは敷きたくない。
そうなると残された道はただひとつ。
「うむ、ステアリングを交換しよう!」
Mk-IVのステアリング自体は、その70年代チックなチープさが気に入っていたものの、これ以上いまの状況を放置しておくのはやはりまずい。そう思い至ったぼくはステアリングを交換することを決意したのである。
ステアリングを交換しよう。ただそれだけの決意を説明するのに2,159文字も使ってしまった。だから1ヶ月の出来事に6回もかけてしまうんだなあ……。
買ったときに装着されていたMk-IVのステアリング。運転していると、たまに太ももが当たることがあった
さっそくぼくはカーマガジンやティーポをはじめとするエンスー系雑誌を本棚からドサッと引っ張りだした。こういった雑誌には、エンスーなパーツの広告がこれでもかというぐらい掲載されているもので、まずはそれらの広告をひと通りチェックするのが手っ取り早いと考えたのだ。
「ふーむ……」
ひと口にステアリングといってもいろいろあるもんだ。
革製、ウッド製、直径がデカいの小さいの、コーンが深いのフラットなの、イタリア製にイギリス製、日本製にノンブランド……選択肢はけっこうあるものなのだ。
しかし調べていくうちに、どうやらMGをはじめとする英国車に定番とされているステアリングがいくつか存在していることがわかってきた。
「定番」
それはあらゆるジャンル、あらゆる世界に存在するものだ。日産車にニスモ、スズキのバイクにヨシムラ、鳶の兄ちゃんにはニッカボッカであり、磯釣り師にはがまかつの竿といったぐあいにである。
エンスーな車において、そのパーツやステッカーなどに『定番』なるものが存在していることは、ぼくもうすうす気がついていた。
もちろん「これしかつけられない」といったように選択肢がハナから限られているケースもあるが、その他多くの場合、「この車にはこれ」「この国の車にはこれとこれ」といったように、装着すべき候補というのが最初からいくらか決まっていて、そのなかからオーナーは自分の車のためにパーツなりステッカーなりを選んでいくのである。
今回のステアリングでいえば、ミジェットに装着するとなると『モトリタ』『マウントニー』といった英国ブランドがまず筆頭に挙げられ、そこにイタリアの『ナルディ』もなんとなくあり、といった状況のようだ。
どのステアリングも定番というだけに、さすがカッコいい。しかもミジェットは純然たる英国車だから、英国系パーツであるモトリタやマウントニーあたりは、当然のごとく似合いそうなかんじだ。
うーむ。やはりここは英国物ということでモトリタかマウントニーか、このどっちかだな。
ということでターゲットは2ブランドに絞られた。ナルディも嫌ではないけど、やはりイタリア物より英国物。さらにいえばナルディのコーンの深さが、ステアリング位置が胸元に迫っている英国車には不都合があるように思えた。ステアリングボスを追加してさらに胸元に近くなることを考慮すると、コーンがやや深いナルディは候補からおのずと外れていく運命にあった。
というわけでモトリタかマウントニー。
さらにここから、ぼくの個人的な好みで革製のものへと絞り込まれていく。木製のツルンとした手触りよりも、革製グリップのあの固いようで柔らかく、しっとりと手のひらになじむ感触が好きなのだ。
革製のステアリングはモトリタ、マウントニー、いずれにもラインナップされていた。
「さて、どっちにしようか……」
カーマガジンの広告欄をしげしげと眺めながら、ぼくは思案にくれた。
「うーむ……」
しかしどうなのだろう。やはりこうして写真だけ眺めたところで、最終的な答えは出ないような気がする。やはり現物をこの手で確かめないといけないのではないか。
なんせステアリングは運転中つねに手で触れるパーツである。ここはやはりステアリングといつも接することになるわが手のひらに「シャチョウ! どれが好みっすか?」とうかがいを立てるのが筋というものだろう。
たしかミジェットを買ったショップにもステアリングがいくつか置いてあったはずだ。英国車の定番であるモトリタも、むろん取り扱っているはずである。
「うん、これはやはり現物をこの手でさわって決めよう」
よーし、さっそくショップに行ってみよう!……とNHK教育番組のお兄さんばりに瞬間移動でもしたいところだったが、あいにくこの頃、ぼくはなんだかバタバタと忙しかった。いちおう新聞社なんてとこで働いているから、お盆に休むために仕事をかなり前倒しでこなすことを要求されたのである。やれ取材だそれ広告営業だと新聞記者っぽく西へ東へと毎日走り回っているうちにカレンダーはあれよあれよと進んでいき、気がつけばお盆になってしまった。
お盆といえば帰省。例にもれず、ぼくも手荷物ひとつミジェットに放り込み、フェリーで瀬戸内海を渡っていった。香川県の真向かいにある岡山県、そこがぼくの実家なのだ。
それまでバタバタと忙しかったのが、お盆休みになると急にヒマになった。休みなんだから当たり前といえば当たり前だけど、とにかくそれまでのあわただしい日々から、いきなりスコーンと自由な時間に解放されたのである。
ふっふっふ。
いよいよである。
ついにステアリングを交換するときがやってきたのである。
「うおおお! ステアリングを換えるぜ!」
座卓の麦茶もひっくり返らんばかりの勢いで吉田栄作風に雄叫びを上げ(ネタが古いなぁ)、ぼくはミジェットを路上に躍らせた。
向かったのは岡山にある某エンスー系ショップだ。そのショップの存在をどうやって知ったのかよく覚えてない。たぶん雑誌の広告かなにかに載っていたんだろう。とにかく岡山ではそこそこ名の知れたショップである。そこならきっとステアリングのひとつやふたつ、いやみっつやよっつやいつつかむっつもあるにちがいない。もちろんモトリタやマウントニーもあるはずだ。
……ゥゥヴォヴォヴォン! ヴォン! ヴォヴォヴォロオオン!
ちょいと派手めなシフトダウンをかましながら(じつはアクセルをあおりすぎた)ショップの駐車スペースにミジェットを滑り込ませる。たちまちショップの店員および客の視線がぼくに注がれる。
一瞬ひるみそうになったが、ここはひとつ「いやぼくミジェットに乗って長いんだよ。今日はねちょっといいパーツでもないかとまあそんなかんじでちょっと立ち寄ってみたんだよいやほんと」とエンスー歴が長いそぶりをみせねばナメられるな、などといらぬ心配をしつつミジェットを降り、ショップの入口をさっそうと(じつはドキドキしながら)くぐる。
「いらっしゃいませ」
常連客とおぼしき男性数人とダベッていた店員が声をかけてきた。
買い物中に店員が背後にはりつくことがどうも苦手なぼくは、その言葉に軽くうなずきつつ店内にすばやく視線を走らせた。
「……おっ」
店の奥、なにやらさまざまな部品が並べられた棚の上に、ぼくはステアリングを発見した。上半身はクールなまま、しかし下半身を鳥山明の漫画のようにスタスタと素早く動かして、ぼくはその棚へと向かっていった。
棚の上には2つのステアリングがあった。ひとつはモトリタ、もうひとつはマウントニーである。うーむ、なんということだ。我が欲する候補であるところのステアリングが2つとも売ってあるとは……。
ニンマリと笑みを浮かべたぼくだったが、次の瞬間、ある事実に気がついた。
2つあるステアリングのうち、マウントニーのほうはやけに外径が小さいのである。
以前見た広告から察するに、どうやらそれはスーパーセヴン用のようだ。フォーミュラマシンばりに小径のそれは、どう考えてもミジェットには不釣り合いである。
「となると……」
ぼくの視線はもうひとつのほう、モトリタのステアリングへと注がれた。
ゆっくりと手を伸ばし、それを握ってみる。
おおっ……。
ぬう……。
これは……。
目を閉じ、手のひらに神経を集中させ、ぼくはモトリタのステアリングの感触を確かめた。それはまるでシジミの吸い物を吟味する海原雄山のごとき、厳粛な振る舞いであった(うそ)。
「むう。この手のひらに吸いつくような柔らかさ。そして滑らかすぎず、適度にグリップをきかせた表面素材……」
手触りは文句のつけようがなかった。それはまるでぼくのためにあつらえてあるかのように、手のひらにしっくりとなじんだのである。
店の奥にある棚の前で、ぼくはひとり恍惚としてステアリングをニギニギした。
逸品じゃ!
ぼくはそのモトリタにすっかり惚れ込んでしまった。
外径31.5cmという大きさもバッチグー(死語)。ちなみにMk-IVのステアリングは外径39.5cmもある(注:いずれもぼくの実計測値)。その差8cm。半径にしても4cm小さくなるのだから、もうこれでステアリングが視界を横切ることもないだろう。
して値段は……。
¥25,000-
ぬぅー。
なんとかまからんもんかのう。
いやいや、このぐらいの出費は覚悟のうえ。愛するミジェットのためにあつらえる貴重なパーツである。金を惜しんで後悔するより、いいものをちゃんと手に入れるほうが絶対いいのだ!
こうしてぼくは、わがミジェットのためにモトリタのステアリング導入を決めた。ついでにたまたまレジのそばに置いてあった「MG」マーク付のホーンボタンも購入。麗しのモトリタ2点セットを手に、ぼくはお盆休みが終わるとすぐさま、香川のショップへとステアリング交換のため出向いたのである。
他のショップで買ったステアリングを持ち込んで、交換作業だけお願いするのはちょっと気が引ける思いだったが、ショップの社長は「いいッスよー」と快く承諾。その場での交換とあいなった。
このとき、モトリタ用のボスを買うのを忘れていたという決定的な失態にようやく気がついたが、さいわいショップに在庫があったためセーフ。
小一時間の作業でMk-IVのステアリングは取り外され、入れ替わりにモトリタのステアリングがコクピットの中央にズジャーンと鎮座することとなった。
とりもなおさずさっそく運転席に収まる。すると……。
「み、見える!」
それまでぼくの視界を横切っていたステアリングは、もはやそこにはなかった。モトリタの小径ステアリングは控えめにぼくの視界の隅にあり、むろん前方の眺めはすっきりクリア、すがすがしいまでによく見えるのである。
「見える! 見えるわ! わたし前が見えるわ!」
「立った! 立ったわ! クララが立った!」
なんの話かよくわからないが、とにかくぼくは「前がよく見える」というあたりまえの事実に、いまさらながら激しく感動したのである。
じつはちょっと心配していたメーターとの干渉もなく、4つ並ぶ計器類はどれもなんとか正常に視認できる。左右のウィンカーレバー、ワイパーレバーには少し指が遠くなったけど、これは慣れの問題で解決できそうだ。ボスをかませたことでステアリングが胸元に若干迫ってきた点は……これも慣れだよ慣れ、慣れればどうってことないさ、たぶん。
左がMk-IVのステアリング、右が交換したモトリタのステアリング。その直径差は約8cmにも及ぶ。Mk-IVステアリングのかっこよさも捨てがたいが、いかんせん前が見えないことには……
ああ、とにかくスッキリした!
前が見えるようになってよかった!
それになにより、モトリタのステアリングを装着したコクピット、もうね、これがね、すんごくね、カッコいいのね、デヘヘヘ。
前がよく見えるようになったしモトリタはかっこええしでもうムヒョヒョヒョーなぼくを見て、ショップの社長も「まあよかったじゃないですか」とうなずいている。
ほんじゃまステアリングを換えてますますかっこよくなったミジェットでちょっとドライブにでも行ってきますわ!
ぼくは勇躍エンジンを轟かせ、ショップの駐車場から出ようとステアリングを切った。
が。
「お、重い……」
ぼくは考えていなかった。
ステアリングを小径にしたことで、低速時にステアリングがやたら重くなるということを……。
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